志賀重昂氏ゆかりの東公園(愛知県岡崎市)
2017年春、岡崎市の東公園を訪ねました。
前年に訪ねた旧本多忠次邸もこの東公園の一角にあります。
この日最後に訪ねたので、閉園までの時間がなく、公園の東半分は回れなかったことを先にお伝えしておきます。
訪問日:2017年5月14日
昭和12年頃の地図にも東公園の文字があり、戦前から存在したことが分かります。
ただ、そこに描かれているのは、世尊寺とため池で公園に取り込まれた3つの池ぐらいです。
タイトルにある志賀重昂(しげたか)氏の発願でできたのがこの世尊寺です。
志賀重昂氏は積極的に海外に学術旅行に出かけた地理学者です。その3回目にタイ、インド、セイロン、ビルマの仏跡を巡り、仏像・仏具・仏石等を収集して大正13年(1924年)に持ち帰り、釈迦牟尼世尊の祭祀と祭殿建立の企画案とともに岡崎市に寄付されたそうです。これに従って釈迦堂建設計画が進んだのですが、昭和2年(1927年)に彼が亡くなったことで計画が中断、しかし賛同者の尽力で昭和4年(1929年)無事仮堂が完成したそうです(岡崎おでかけナビ「志賀重昂ゆかりのスポット 東公園」より)
志賀重昂氏ゆかりの記念碑は岡崎公園にもありました。
戦後間もない時期の写真を見ても、現在の公園域では、3つのため池のほか、白く光る世尊寺ぐらいしか目立ちません。
既に後で触れる南北亭も移築されているはずですがよく分かりません。
訪問時の世尊寺です。
時間の関係で中には入っていません。
世尊寺前あたりから眺めたため池。
同じくため池。向こうに噴水や浮御堂が見えます。
対岸からの写真。木々がよく育って気持ちの良い散歩道になっています。
浮御堂です。1960年代に作られたようです。
移築された南北亭。
もとは「四松庵」といって、明治44年、東京代々木の志賀重昂邸内に茶室を兼ねて建てられたものです。
面白いのが、世界各地で収集した木、竹、石を用いて建てられていることで、例えば柱には南大東島のビンロウジュ、天井にはサハリンのトド松、床柱には台湾産の大竹、壁砂には上部にサハラ砂漠、下部にエジプト砂漠の砂を使っているという、地理学者が趣味に走った建築です。中を見てみたいなと思います。
昭和4年(1929年)、世尊寺ができたと同時に移築され、「南北亭」と改名されました。(以上、現地の解説板より)
南北亭を裏側から。
南北亭の下には、茶室の等澍庵があります。
これは天保2年(1831年)、茶道宗偏流の再興者である不蔵庵龍渓の設計により伝馬町の商家、大黒屋の庭に建てられたものです。
昭和58年(1983年)、市に寄付されてここに移築されました。(現地の解説板より)
公園内には志賀重昂氏の墓まであります。
昭和5年にインドのストゥーパ様式で建てられました。
遺骨は分骨されてもう一か所、生前に氏が選定した青梅街道沿いの北澤村宗元寺にも埋葬されているそうです。(現地の解説板より)
公園内には志賀重昂氏関連意外にも興味深いものがあります。
こちらは「消防記念館」と書かれた建物です。古そうですが、説明はなく、来歴が分かりません。
その前に「滅私奉公」と書かれた紀元二千六百年(昭和15年)の記念碑があります。
岡崎市警防団連尺分団によるものなので、あるいは消防記念館の建物とセットで移築されたのかもしれません。
その隣には本多光太郎資料館があります。
これは地球物理学・磁気学等の研究者、本多光太郎博士の少年時代の勉強部屋を昭和44年(1969年)に移築したものです。
私は知らなかったのですが、博士はKS磁石鋼や新KS鋼を発明し、「鋼鉄の父」とうたわれる方だそうです。
生家は新堀町にありました。
(岡崎おでかけナビ「本多光太郎資料館」より)
資料館の展示案内図です。
見てみたかったのですが、既に閉館時間を過ぎていたので入れませんでした。
こんなものもあります。
「三景艦主砲砲弾」
日清戦争(1894〜95年)の黄海海戦において日本艦隊の三景艦「松島」「橋立」「厳島」の主砲に使われた砲弾だそうです。
海の記念碑(昭和52年)
この錨は戦艦長門の副錨で、戦後まもなくアメリカがビキニ環礁で行った原爆実験の標的にされた時の唯一の遺品という説明がありました。
公園内には無料の動物園もあります。ここはニホンジカ舎。
閉園時間が近いので、このあたりは駆け足で回りました。
園内には恐竜広場もあります。
恐竜モニュメントが11体もあります。私が訪ねた後の2018年にも追加されているようです。
そういえば東山動植物園にも、岡崎市南公園の交通広場にも恐竜像があったなと思い出しました。
東公園は志賀重昂氏ゆかりの世尊寺とその境内が出発点になっていますが、それにとどまらず様々な歴史的、娯楽的な施設が持ち込まれて、近年には旧本多忠次邸が移築されるなど多世代に魅力的な公園になっています。
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