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2023年2月 1日 (水)

四国みぎした旅行(7)吉良川の街並みと近代建築(高知県室戸市)

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2022年GWの高知旅行の2日目です。

重伝建地区の吉良川に泊まった朝、初訪問なので、まずは周囲を歩き回りました。
吉良川の集落は海沿いの街道に沿って長く伸びています。そのメインストリートに直交する道で一番重要度が高そうなのが、この御田八幡宮に向かう道でした。この道の脇にまちなみ拠点施設があります。

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吉良川まちなみ拠点施設「まちなみ館」です。
手前が明治後期に建てられた旧長田家住宅で、昭和初期には豆腐やこんにゃく屋を始めたそうです。台風に備えて軒を低く押さえた建て方がこの地域の特徴と説明されていました(南が太平洋に開けた海岸なので台風の風をまともに受けます)。
ここで街のパンフレットやマップをもらったり、まちなみ解説や収集物を見せてもらったりしました。

吉良川町は江戸時代から林業が盛んでしたが、明治になると木炭の生産が始まり、大正に入ると紀州から伝えられた技術で良質な備長炭を産出するようになり、この備長炭を京阪神方面に販売することで栄えたそうです。

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「まちなみ館」は旧長田家住宅とこの旧松本家住宅を中庭でつなぐ形で構成されています。
旧松本家住宅は昭和初期の建築で、生業は木挽職人と農業だったそうです。
表の街道(下町地区)から内側に入ったこのあたりは上町地区と言って職人が多く住んでいたと説明されていました。

べっぴんさんの家と言って食事も提供されているのですが、この日はあいにくお休みでした。

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また同じ並びには「おまつり館」もあって、祭り関係の展示がありました。

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観光地だけあって、あちこちに案内板が立っています。

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裏通りにもまた水切瓦の蔵が建っています。
水切瓦は、台風などによる多量の降水から壁面を保護するため壁面に何段ものひさしを取り付けているもので、景観的に強い印象を与えます。

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こちらは旧街道です。商家が集まっています。

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この通りに目立つ近代建築があります。
大正15年に建てられて、昭和40年頃まで現役だった旧吉良川郵便局(熊懐家住宅)です。

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郵便マークの鬼瓦という説明を読んで見上げると、ちょんまげのように突き出した先に郵便マークが入ったユニークな鬼瓦でした。

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こちらは特に説明はなかったのですが、消防団のマークが入った建物です。
今は民家になっています。

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玄関部分。人の出入りはこちらからで、左はポンプ車の車庫になっていたのかななどと想像します。

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白いタイル張りの散髪屋さん。

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近代を思わせる門柱と水切瓦の建物、そしてレンガ壁の建物の並び。

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こちらは明治44年の武井家住宅。
米穀商と遠洋漁業を生業としていたそうです。
壁一面のレンガ積みが印象的。

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こちらも煉瓦塀の続く路地。
角が丸くなっています。

吉良川の町のあちこちで煉瓦を見かけますが、これは京阪神との交易の帰り荷として船底に積んで持ち帰られたという説明がありました。
備長炭を運んで、煉瓦を持ち帰ったという流れなのでしょうか。
ということは関西系の煉瓦ですが、ここでは刻印は見つけられませんでした。

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近代のものということでは、町外れに忠霊塔がありました。
門柱の裏には「昭和八年参(3)月改修」と刻まれています。

結構広い敷地なのは、元々個々の墓標が立ち並んでいたのを昭和49年に忠霊塔として集約したのだそうです。

 

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敷地内には忠魂碑(大正11年)も建っています。

 

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集落の北側に吉良川小学校があります。
ここに「二宮尊徳先生幼時之像」があります。
これは昭和12年の建立らしいです。台座が立派ですね。

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吉良川小学校では、この体育館の入口が気になりました。
新しい建物に見えるものの、3連アーチに付け柱とか、浅いヒップゲーブルとか、持ち送りとか、デザインは明らかに近代建築。
何でこんな建て方なんだろうと思い、ネットで調べてみますが、探し方が悪いのか見つけられません。

そんな時、さっきの写真を拡大してみると・・・

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ここに答えがありました。(ほんとにさっき気付いた)

「昭和十七年、井上長栄翁が寄付した吉良川小学校の旧講堂」という言葉とともに、あの近代建築が(ついでに二宮尊徳像も)イラストで描かれています。昭和17年という物資統制の厳しい時代によくこれだけの洋風デザインで建てましたね。

この銅像になっている井上長栄氏とは、井上特殊鋼株式会社(現(株)ISSリアライズ)の創始者だそうです。

→(参考)好奇心いっぱいこころ旅「室戸市立吉良川小学校(高知県室戸市)」

また、寄贈を受けた講堂のデザインを一部とはいえ継承しているのはありがたいことと思います。
もちろんそのまま残してもらえるにこしたことはないのですが、こうして惜しむ気持ち、感謝する気持ちが目に見えてあるのは好ましく感じます。

吉良川は、水切瓦、煉瓦、石積塀のいしぐろ(次回紹介します)など、見た目に特色のある街並みでした。
観光地でありつつも、騒々しさはなく、落ち着いて歩き回れる街です。
NPO法人吉良川町並み保存会では、ボランティアガイドも実施されているそうです。

<関連記事>

 シリーズの最初の記事
 (1)高知県境の町へ

 

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