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2020年5月26日 (火)

橘土地区画整理事業と立花駅(尼崎市)

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昨年夏から今年にかけて、以前から気になっていたJR立花駅(尼崎市)のあたりを探索しに行きました。
このあたりは昭和初期、橘土地区画整理事業によって開発された地域が、立花駅を中心に広がっています。

駅南側の広場には大きな楠(?)があり、その足元に記念碑が立っています。

訪問日:2019年8月31日、9月16日、2020年1月4日

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こちらの「土地區劃整理整理記念碑」と書かれた石碑です。

 

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 裏側には「事業の経過」として橘土地区画整理事業の経過が書かれていて、昭和15年に建てられたことが分かります。
 せっかくなので全文を記しておきます。

 


        事業之経過

昭和八年八月二十五日 立花駅設置請願採択
同  年十一月十五日 土地区画整理組合設立認可
同 九年七月一日   工事着手
同  年七月二十日  立花駅旅客取扱開始
昭和十年十月十日   工事完了
同十四年五月三日   土地区画整理換地処分認可
同  年七月二十四日 同 賃貸価格配賦済
同  年十月十一日  同 登記完了

本事業は省線立花駅の開設を主眼とし、駅の周囲部
十八万五千坪に亘り土地区画整理を施行せしものに
にして祖先伝来より耕耘し来りたる農耕の地を利用
方法を変じて宅地となす画期的事業なりしも、幸い
所期の目的を達成し得たり。茲に事業経過概要を録
して記念とす。

昭和十五年七月吉日 橘土地区画整理組合
             


 ※旧字体は可能な限り新字体に変更しました。
  送りがなはカタカナをひらがなに改めました。
  適宜、改行や句読点を追加しています。
  不正確かもしれませんので参考程度にご利用下さい。

ここに概略が書かれていますが、新駅を誘致して周辺を宅地化する開発方法を戦前に実施したということです。

Web版「図説 尼崎の歴史-近代編」の「新しい住宅地の形成」には、もう少し詳しい経緯とともに、図版などが紹介されています。

また、尼崎市立地域研究史料館の第37巻第1号(2007年)には、巻頭グラビアとして「立花駅の新設と橘土地区画整理事業」の記事があり、そこに開発当初の写真がたくさん出ています。

とくに橋の写っている写真に添えて「当時の住宅地販売パンフレット『橘案内』には「モダン小橋を架設して風致を添えた」と記されている。このとき架設されたものは現在も区画整理地区内に見ることができる。」とのキャプションがあり、実際、この橋は現地で見ることができます。

水路にかかる小橋は3タイプ確認できました。

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まず最初はこちら。道路側から見ると家形の凹みに穴が開いたデザインです。

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水路側から見ると凹みは五角形と三角の組み合わせになっていて、むしろこちらの方が正面のようです。

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2番目は分割されたアーチ型のデザインです。

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これも水路側から見ると、より凝ったデザインになっています。

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三つ目はシンプルに、四角い凹みに三角の開口部があるデザイン。
これが写真で紹介されていた小橋のデザインです。
なお、親柱のデザインは、全て同じデザインのようでした。

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ほとんどは1つの橋に1つのデザインですが、1ヶ所、水路が分岐している所で、L字に2つのデザインが併用されている所がありました(地域の北西)。

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<Web版「図説 尼崎の歴史-近代編」に引用されている『立花駅30年のあゆみ』の区画整理後の図版をもとに加工>

確認されたデザインを地図にプロットするとこんな風になります。
アーチになっているタイプ(赤丸)が最も多くて9ヶ所。五角形(青四角)が5ヶ所。三角(黄三角)が3ヶ所でした。
合計17ヶ所。

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それ以外に気になったものとして、水路脇の国旗掲揚台のようなものがあります。
地区の西南部にありました。

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地区内で見かける古い住宅では、平屋の二戸一長屋が多いように思いました。
例えばこれなど。

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これも同じく。

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これも。石張りの門柱の造りや板塀のデザインなど古いもののように思います。
それに郵便新聞受が右書きになっていました。

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こちらは小松公園南側の住宅。
平屋の一戸建てに見えますが、二戸一住宅です。
下見板張りですし、古そう。

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地区内で最も本格的な近代建築はこちら。
地区の南側にあります。元は医院ではないでしょうか。

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煉瓦塀の大きなお屋敷もあります。
住宅自体は建て替えられているようでした。

 

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駅南側にはスクラッチ風パターンのタイル貼り二階建て長屋もあります。中央に奥の住宅への門があって、大家さんでは?と思えました。

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地区南西の住宅。こちらも屋根など改修されていますが、古そうです。

 

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こちらも地区南西側の大きめの平屋一戸建て。

こんな風に、とくに地区の南側に古そうな住宅が多く思えました。

地区北側の放射状街路パターンや公園配置なども開発当初の形を引き継いでいる訳ですが、やはり小橋のデザインが最も開発時の雰囲気を感じられると思います。

 

<関連記事>
 目次「近代の郊外住宅地と別荘地、社宅」  

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