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2020年2月11日 (火)

配水塔の稲葉地公園(名古屋市中村区)

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もう少し名古屋の近代の公園の話題を続けます。
日を改めて中村区の公園をめぐりました。

以前、中村公園には行ったことがあり、それ以来です。
「中村公園のラジオ塔?」
改めて確認したら、ラジオ塔を紹介しただけで、中村公園自体はちゃんと紹介していませんでした。
いずれ機会がありましたら。

さて、地下鉄の中村公園駅から西に歩いて行くと稲葉地公園に着きます。

北側正面から見るとなんとなくギリシャ風の列柱の向こうに、列柱に囲まれた名古屋市演劇練習館アクテノンが見えます。
この建物はもともと昭和12年に建てられた稲葉地配水塔で、この改修事例は有名なので私も写真では見たことがありました。
もちろん塔の列柱にちなんで、手前の列柱を並べたのでしょうね。

訪問日:2018年12月9日

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この公園の平面図を見ると面白い形をしています。
つまり公園が南北に突き出しているんです(右が北です)。
この南北軸は稲葉地配水塔の中心を通っていて、配水塔を中心に据えた設計になっていることが分かります。
現在の配置というだけでなく、当初の図面を見てもそうなっています。

『名古屋の公園』(昭和18年)によれば、昭和13年に稲葉地土地区画整理組合から寄附を受け、昭和17年に着工、昭和18年に完成したとのことです。当初の設備としては、配水塔の他、池、野球場、花壇、徒渉池、ブランコなどの遊具があったそうです。

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こちらが北に延びる街路。

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こちらは南側に延びる公園から見たところ。
こちらは完全に公園です。旧配水塔が真正面に見えます。

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旧稲葉地配水塔は昭和12年にできました。名古屋汎太平洋平和博覧会が開かれた年です。名古屋市西部で区画整理による都市開発が進み、水需要が増大して市街地東部・東山の配水場ではまかなえなくなったため、市内2番目の配水塔として計画されました。当初は貯水容量590立米で計画されてもっとシンプルな形だったのですが、計画中に水需要の増大が見込まれたため、改めて4000立米のタンクに変更され、大きなタンクを列柱で支えるという特徴的な形になったようです。(『愛知県の近代化遺産』(平成17年)p242〜244より。以下も主に同書による)

しかしながら、昭和19年に市内西部に大治浄水場が完成し、配水方式がポンプによる圧送に切り替わったため、わずか7年で稲葉地配水塔は役目を終えてしまいました。

その後、水道局の管理のまま約20年間放置されていましたが、名古屋の一区一図書館の施策により、改修を経て、昭和40年に中村図書館として開館しました。この時、吹き抜けだった2〜4階にスラブを打つ改修が加えられています。図書館としては26年。中村公園内に新図書館が建設されたため、平成3年(1991年)に閉館しました。

しかし演劇関係者から市民向けの演劇練習場確保の要望を受け、大小の練習室を設け、2階中央のスラブや屋根スラブ、柱の一部を撤去して鉄骨で置き換えるなどの工事を経て、平成7年(1995年)に名古屋市演劇練習館アクテノンとしてオープンし、今に至っています。今年で25年ですね。もうすぐ演劇練習館としての利用期間が一番長くなります。

この日も演劇の練習で使われていて、わずか7年で役割を終えてしまった建物がこのように使い続けられるというのはありがたいことです。
ちなみに演劇練習館への改修を決断したのは当時の西尾市長。実は水道局出身で、中村図書館への改修の際に担当課長だったというのは不思議な巡り合わせです(施設紹介パンフより)。

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勝手に見て回ってもいい感じの建物ではないので、事務所で建物の見学に来ましたと申し出ると、職員の方が案内してくださいました。
1階には図書館時代を思わせる書架が並んでいます。
そして中央にはタンクを支えていた柱。

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柱は吹き抜けになった2階、3階を突き抜けています。

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4階が一番、配水塔らしさを感じられる空間です。
タンクを支える構造が見えています。

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さらに配水塔時代の配管が今も残されています。

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タンクだった5階にはリハーサル室があります。
この日も練習が行われていましたので、外して撮っています。

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5階の平面図。
当然ながらこういう丸い形の配置です。

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4階には、配水塔時代、図書館時代など時代ごとの写真・資料が展示されていました。

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4階からの眺め。
この下にはかつてプールがありました。
水道施設にプールは付きものみたいですね。

高層ビルが建ち並んでいるのが名古屋駅のあたり。

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紅葉の季節は過ぎていましたが、きれいな並木道がありました。

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公園を歩き回って気になった遺構も少しあげておきます。
こちらは公園の西側。ここにも入口があったのでしょうか。

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敷地の北西あたり。土管のようなものが突き出しています。
水飲み場?かとも思いましたが分かりません。

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こちらは私にはなじみ深いグッドデザインな水飲み場。

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名古屋らしく、富士山型遊具もあります。
赤富士です。

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懐かしい回転ジャングルジム。

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最後に、感心したのが名古屋には遊具を寄附する「まごころ遊具事業」という制度があるのですね。
私的なメッセージを書いたプレートを取り付けることができるのですよ。

稲葉地公園は今も配水塔が主役の公園でした。

<関連記事>
 日常旅行日記「近代の公園目次」

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コメント

お久しぶりです!最初の写真を見て「えっ、コロシアム?」って近眼プラス老眼の私は思ってしまいました。お笑いください。

神戸より西には行ったことがないのですが、古き良き時代を残しているなっていつも思います。その神戸も、発熱して親戚のお宅で唸っていました。両親は親戚のお姉さんに私を任せ、神戸見物していました。ずっと昔の想い出です。

次を楽しみにしています。

投稿: まあちゃん | 2020年3月 5日 (木) 20:07

まあちゃんさま、お久しぶりです。
このブログは結構、神戸より西のことも書いていますが、この記事は名古屋ですので東です。
名古屋などはいらっしゃったことありますでしょうか。
またよろしくお願いします。

投稿: びんみん | 2020年3月 8日 (日) 21:30

今までの感想が一気に名古屋で収まってしまったのです。送信してから勘違いされえるコメントだったと反省しました。因みに名古屋は訪れたことありません。回数としての関西は高野山が一番多い、と言っても数えられるほどです。両親の生まれ故郷だったので。

次を楽しみにしています!

投稿: まあちゃん | 2020年3月 9日 (月) 11:04

そういうことだったのですね。
名古屋も面白いですよ。
高野山はケーブルカーが新しくなりました。
また西の方も訪ねる機会がありましたら。

投稿: びんみん | 2020年3月18日 (水) 01:42

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