六条院公園(京都市下京区)
昨年の8月の終わりに、京都の六条院公園に行きました。
以前から、近代の公園を見て回っているのですが、京都については、土井勉さんが「土木史研究」に投稿された「京都市の公園形成史-第二次大戦前まで-」という論文を参考にしています。
その中で、昭和12年に皇太子誕生にあたり、京都市では50万円で記念事業を行うことになり、子どもの誕生を祝う事業としては子どもための公園が良いだろうという提案が通って、市街中心部に7つの児童公園が計画されたと紹介されています。
富小路殿、六条院、橘、玄武、南部、小坂、坊城の7つです。
このうち坊城の用地は交通局の車庫になり、実現しなかったそうですので、できたのは6公園です。
これらの児童公園は当時としては整備水準が高く、プールを併設していたということで、ぜひその公園をみたいなと出かけた次第です。
同論文によれば、六条院公園は2317㎡。旧下京区役所の跡地に作られたとのことです。
旧下京区役所というのはこれでしょうか。
(株)津田甚建設HP「京都市下京区役所(木造)」 大正6年にできています。
公園の北東の入口。
六条院公園の表札や周囲のデザインは古いのではないかと思います。
下の方は鉄平石が貼られています。
公園の中にはいくつか気になるものがあります。
これは水の流れるようなデザインなので、水飲み場でしょうか。
ベンチの後ろにあるのは、形からいって国旗掲揚台でしょう。
後ろに半円状の窪みと柱を固定する穴があります。
デザインもアールデコといえなくもない曲線です。
階段の真ん中には花壇があったようですが、木が育ちすぎて破壊された模様。木も刈られてしまっています。
そんな写真を撮っていると、公園に面して工事をしていた方に声をかけられました。
さすがにあやしいですよね、公園で何もないようなところを写真撮っていたら。
この方、「そのうちカフェ」というお店を作ろうと準備されているところなんだそうです。
ユニークなことに、公園に面して利用する代わり、公園の草刈りなどの管理を請け負っているそうです。
そして、地元の人に聞いたという、この公園の昔の姿を教えていただきました。
先ほどのテラスのようなところにかつてプールがあったそうです。
立派な公園だったとのことです。
そして隅にあるこの扇形の区画。
部分的に柵で囲まれていて、角に何かあります。
近づくとこんな感じ。
明らかに水が出ていたように思われます。
私は壁泉と池かなと思ったのですが、幼児用プールの跡だそうです。
周囲を見て回ると、南端の中央部に柱の跡のようなものがありました。
コンクリートの遊具があったりします。
この遊具は以前、紫野柳公園でも見ました。
1ヶ月ほどたって再訪してみると、「そのうちカフェ」がオープンしていました。古い建物が大工さんの手でリノベーションされています。
ご夫妻がきのこ採りが趣味とのことで、場合によってはきのこ料理があったり、本格的な中国茶があったり、面白いお店です。冬には囲炉裏が使われるそうです。
何より、公園から出入りできるというのが良いです。
案内板によれば、高倉会館は東本願寺の学場「高倉学寮」の講堂を始まりとし、現在の建物は、幕末の兵火で焼失した後、明治16年に本格的に再建されたものです。
真宗大学(現大谷大学)の講堂だった時期もあるそうです。
大学移転後の大正時代には一度荒廃しますが、大正11年、新たな聞法道場「高倉会館」として復興しました。昭和5年には高倉保育院が併設されています。
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コメント
去年の夏にこの近くに泊まりまして、夜、ぶらぶらと散歩していて、この公園を見つけました。六条院という名前に、源氏の君のお屋敷はこのあたりにあったという設定なのかなあと思って覚えています。わりと唐突に広い敷地が広がるし、今風の公園でもないし、ふしぎな空間だなあと思いました。夜の六条院公園はちょっと意味ありげに暗かったですよ(^^)
投稿: やむやむ | 2019年1月 8日 (火) 00:59
ヤムヤムさん、コメントありがとうございます。
そう書くのを忘れていましたが、皇太子生誕記念公園はそれぞれ古い京都の地名に因んで付けられていて、六条院はおっしゃるように源氏物語ですね。架空ですが。
今で言う「聖地」?
夜は怨霊が出そうな雰囲気でしょうか。
お店ができたので、少し明るくなったと思います。
投稿: びんみん | 2019年1月 8日 (火) 21:03