上野下アパートを見納め(東京都台東区)
最近、最後の同潤会アパートである上野下アパートが5月から解体されるとニュースになっています。ちょうど東京に行く機会がありましたので見納めしてきました(初めて見るのですが)。
同潤会は関東大震災からの復興住宅を供給するため、内務省が大正13年(震災翌年)に設立した財団法人で、東京・横浜に16ヶ所の集合住宅を建設しました。昭和4年に建設された上野下アパートもその一つです。
同潤会や上野下アパートについては他に詳しい解説などがありますので省略します。
場所は東京メトロ銀座線・稲荷町駅のすぐ近く、JRの上野駅からも徒歩圏内の便利なところですが、アパートのある場所は表通りから一本入って静かです。
ほぼ全景。アパートは道に平行して建てられています。
細長い1棟と小さな1棟の2棟です。
住民の方の引っ越しはまだ完了していないので、立ち入らないようにという注意書きがあり、表から見せていただくだけにします。
建物は4階建て。
水平・垂直に延びるかっこいい形です。
4階が張り出しているのですね。
建物との間にはちょっとした庭があります。
「上野下アパート」の表札。
門柱はスクラッチタイル張りです。
全体にこの色合い。
共用の玄関には木の扉が残っています。
プライバシーの関係で消しましたが、玄関上にお住まいの方の名前が並んでいます。
「建築計画のお知らせ」を読むと、地上14階、地下1階の店舗付き共同住宅に建て替えられるのですね。
解体後、8月から建設工事が始まるようです。
歴史的な意味のある建物が、1つも残らないというのは惜しいことですね。
今回は近代建築探訪MLの皆さんに連れて行っていただいたので、ついでに近くの近代建築なども案内していただきました。
これは東京メトロ銀座線の稲荷町駅。昭和2年にできた初期のものです。
プラチナ万年筆の建物。
裏側の方が面白いと教えてもらいました。
上野下アパートから見るとこちら側がみえます。
近くの蓮城寺。
洋風部分が真ん中にはまり込んだような面白い構造です。
これはかなりびっくりの比留間歯科医院。
歯科医院という感じではない素敵な建物です。
これも昭和4年だそうです。
裏手に回ると旧下谷小学校。
シンプルなデザインながら、昭和3年建築の復興小学校のひとつだそうです。
現在は使われていません。
この季節だから校舎が見えますが、夏にはツタにびっしり覆われるようです。
何か利用されると良いのですけどね。
こうしてみると関東大震災からの復興期の建築がまとまって残っていることが分かります。
今まで上野に来ることはあっても西側ばかりで、今回案内してもらった東側も震災復興の建築という意味で面白いと思いました。
<関連記事>
「阿佐ヶ谷住宅の残照」(2012.6.23)
…阿佐ヶ谷住宅も解体間近で、最近立入禁止のロープが張られたと聞いています。
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