富山の岩瀬湊（５）夕暮れ散歩

岩瀬の大町通りを離れ、今にも降り出しそうな空の下、夕暮れの岩瀬の街を歩き回りました。
まず見に行ったのは街の端にある旧東岩瀬駅舎です。

東岩瀬駅は大正13年に、富山と岩瀬を結ぶ富岩鉄道の越中岩瀬駅として開業しました。
その後、国鉄・JRの駅となり、2006年（平成18年）からは富山ライトレールの駅になっています。
その大正時代の駅舎が、改装されながら現在も残っています。

乗降口も残してあるのですが、富山ライトレールの駅舎は別にあって、現在旧駅舎は休憩室として利用されています。
窓の桟の切り方、型板ガラスの使い方がしゃれてます（大正時代に型板ガラスはないですが）。

東岩瀬の駅から大町通りに向かう道の途中には、ロータリー的な広場があり、モダンな忠霊塔が立っています。昭和16年に建てられたものです。

とりあえず集落の端っこまで確認しようと歩いて行くと、行く手に大きな近代建築が。
昭和タイタニウムの事務所です。
後で調べたところでは、昭和８年に試験操業を開始した日満アルミニウムの事務所でした（昭和12年築）。
国内でのアルミ精錬が始まったのは昭和９年とのことで、日満アルミニウムは、満州から輸入した礬土頁岩（アルミナ分の多い耐火物粘土）を原料にアルミニウムを生産しようとした、当時最先端の（軍需）工場の一つなのだそうです。
大陸への玄関口としての立地が生かされた訳ですね。

裏にある工場の建物も古そうです。

内部の様子は、富山県ロケーションオフィスのHPで紹介されています。

再び街中に戻ります。
古い町だけあって、岩瀬には造り酒屋の桝田酒造店の大きな醸造場があります。銘柄は「満寿泉（ますいずみ）」、「岩泉」です。
明治期に旭川で操業といいますから、北前船の町らしい話です。

昔の繁栄の跡はいろんなところにうかがえて、例えば、岩瀬小学校を取り巻く石垣。扇形の石を組み合わせて積んでいます。
これが100ｍほども続いているので壮観です。
岩瀬小学校は昭和２年に富山県で初めて鉄筋コンクリートの校舎を建てたといいますから、先進的です。港町ならではの早さでしょうか。今は残っていないのが残念ですが。

ちょっと面白いコンクリート塀を見かけました。
表面に渦巻き模様が入っています。初めて見ました。

ちょっとした赤煉瓦の地蔵堂があったり。

見事な細工の祠があったりします。

今は静かな港町。

なんとか天気が持ってくれればと思ったのですが、とうとう雨が降り出しました。
雨宿りがてら、岩瀬に行く機会があったらぜひ寄りたいと思っていた、紅茶の店「アナザーホリデー」にも行ってみました。
場所がよく分からなくて、いろんな人に道を聞きつつ。
紅茶とスコーンをいただいてほっとします。

帰り道に見た老舗料亭の松月さん。
創業明治44年で、昔の賑わいを伝えるお店の一つです。
私は表から見ただけですが。

再び岩瀬運河を越える頃、雲の切れ間から太陽が出てきました。
岩瀬に来て初めて見る太陽です。

すると反対の空には鮮やかな虹が！
岩瀬運河をまたいだ架かっています。

しかも外側にもう一本の虹が。
ここまできれいな虹を見たのは久しぶりです。

とてもうれしいお見送りでした。

帰りも富山ライトレールで富山に戻ります。
富山ライトレールの便利さはありがたいですが、次回は富岩運河の船に乗りたいものです。
岩瀬を後に、宿泊地の砺波に向かいます。
（高岡編につづく）