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2012年4月12日 (木)

大阪中央郵便局の見学会に参加(大阪市北区)

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4月8日の日曜日、旧大阪中央郵便局の見学会に参加しました。JR大阪駅の真ん前にあるこのビルです。大阪の人には説明無用ですね。

モダンデザインなので見た目には分かりにくいのですが、逓信省(のちの郵政省)の吉田鉄郎の設計で昭和14年に竣工した近代建築です。
私も郵便局は何度となく利用しました。

再開発されることになり、高層複合ビルに建て替えてオリエンタルランドの劇場が入る計画が2010年に頓挫し、工事の囲いがされたまま、しばらく音沙汰がなかったのですが、昨年末に「玄関部分を残した解体と3年間の広場としての暫定利用」が発表されました。
 
 朝日新聞「旧大阪中央郵便局、玄関残し取り壊しへ」 (2012.1.3)

 これに対応して、「大阪中央郵便局を守る会」の活動が組織され(以前から保存運動はあったのですが)、解体中止と庁舎の活用を求める運動が行われている状況です。

 解体業者が決まり、当初3月に解体開始という話でしたが、今のところ解体は始まっていません。

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<庁舎の東側。非常に窓が広く取られています>

 4/6(金)に突如、日本郵政主催による内部見学会の案内が流れ、90人の枠がその日のうちに埋まるという勢いで見学会が行われました。関心の高さが分かります。
 3回に分けて開催された見学会のうち、16:30開始の3回目に私は参加したのですが、知っている人がいっぱいでした。

 内部写真の撮影はOKだったのですが、ブログ等での公開は禁止ですので、写真はお見せできません。すみません。外の写真だけ載せておきます。

 集合場所は、南側の職員入口。
 中庭に面する天井の高いエレベーターホールです。壁には郵便局の赤い文字盤の時計。
 ここでヘルメットを渡されます。簡単な案内資料と絵葉書もいただきました。

 そこから、吹き抜けのある階段を6階まで上がります。
 ここも中庭に面して広い窓があるので明るい階段です。
 階高が高いので普通の6階よりかなり高さがありますが、写真を撮りながら、眺めながらなので苦にはなりません。さすがに6階から吹き抜けを見下ろすと足がすくみます。

 6階にも屋内部がありますが、周囲が屋上になっています。
 ここも広いガラスの窓で、互いに見通せます。
 屋上はグレーの滑り止めタイルが敷かれていて、郵便局時代には昼休みに休憩に使われていたのかなという感じのスペースでした。大阪駅や周辺のビルを見渡すことができて絶景。ほとんど手を入れなくても使えそうな感じです。
 「ここをビアガーデンにしたら最高」と参加者の意見が一致していました。
 
 外壁に張られている明るいグレーのタイルを間近に見ると、角の丸いタイルが使われていて、昔の建物の細やかさには感心します。
 
 最上階に「室械機機降昇」?、「室段階」の文字も。

 今度は大阪駅を見下ろせる階段を降りていきます。
 溢れるほどの夕陽が差し込んでいます。

 3階の現業室に入ります。
 ここは積み木のようなタイルが敷き詰められた大空間で、八角形の柱が間隔を置いて並んでいます。
 四角い柱では感じない、ちょっと特別な空間。かつては大量の郵便物とたくさんの人が忙しく動き回っていたはずですが。広く取られた窓を通して、駅前のビルや大阪駅が広がっています。

 木の床の感触も良いです。
 皆、夢中でこの空間を味わい、写真を撮り、案内される郵政の方も誇らしげに見どころを教えてくださいます。

 西側に回ります。こちらにも大きな部屋があり、やはり八角形の柱が並ぶのですが、西日が静かな木の床に奥深く差し込み、なんともいえない、いい感じです。この時間で良かったと思います。

 また階段を下りて、1階の現業室と裏の発着場。
 ここは営業時に料金別納郵便を出しに来たことがあります。
 裏の土地が傾いているのは、地下水のくみ上げで1mほど地盤沈下したためという説明。
 発着場のプラットホームの下には四角いガラスブロックが並んでいます。残念ながらその先の地下室は今回の見学コースには入っていません。

 最後に公衆室(窓口ロビー)へ。
 ここがもちろん一番馴染みのある場所です。
 こうして見学にやってくるのは不思議な感覚です。
 ハンドルを回すと12枚の窓が一斉に傾いて開いたり、閉じたりする様子も見せていただきました。

 これで1時間の見学時間は夢のように終了です。
 私の知っていた大阪中央郵便局はほんの一部でした。

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 大阪中央郵便局の内部は、その見上げる空も含めて、今から経済性などを考えたら実現しないような空間で、計画が決まっているならともかく、とりあえず広場にするなら、同じ暫定でもこのまま使ってもらった方が魅力的なのになと思います。

 たんなる保存運動ではない、活用の知恵がたくさん出てくることも、大阪中央郵便局に留まらず、大阪にとって貴重な経験になるはずです。

 まずは他の人にも空間を体験してほしい。
 わずか1日で90人が集まったのですから、もっともっと見たい人はいるはず。
 今回の見学機会があったのはうれしかったのですが、今回見られなかった方にも見学の機会があるよう、再びの開催をお願いしたいと思います。

<関連サイト、記事>
 大阪中央郵便局を守る会
  ※過去のシンポジウムなどもアーカイブされています
 ゴリモンな日々「大阪中央郵便局の建物内部見学会」
  ※同じ回での見学でした

(追記)
 大阪中央郵便局は、一部を残して解体されました。
 また研究者の皆さんが重文指定を求めていた訴えも却下されました。
 (2012.12.30記)

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コメント

突然すみません。自分は今高校二年生です。建築に興味があったこともあり、大阪の近代建築について前から調べていました。
その過程で旧大阪郵便局の存在を知ったのですが、自分が知る頃には既に取り壊されてしまっていました。自分でリサーチもしましたが精々建物の外装やエントランスまでしか写真は出回っておらず、内部写真などはどこにも見当たりませんでした。
そこでお願いなのですが、旧大阪郵便局の内部写真をメールで送って頂くことは出来ないでしょうか?2012年の頃はまだ小学生でこの建物が存在していたことすら知りませんでした。せめて写真でも見てみたいと思い、コメントを書きました。
ブログ主さんには何のメリットもなく、見ず知らずの人間が書く文章をどこまで信用してもらえるかも分かりませんが、少しでも可能性があるならと思い、この文章を今書いています。
拙い文ですが、ご検討お願いします。

投稿: どこかの神戸市民 | 2022年2月22日 (火) 17:13

どこかの神戸市民さま

コメントありがとうございます。
すみません、この時、公開しない条件での撮影許可だったのですよ。いずれ保存されているブロックが再び陽の目を見る時にはまた内部の写真・映像なども出ないかなと期待しています。
酒井一光著「発掘the OSAKA」はご覧になったことありますでしょうか。少し内部の写真が載っています。他にも書籍になっているものがあるかもしれませんが。

高校生で近代建築がお好きとは頼もしいです。
近代建築は急速に失われていっていますので、ぜひ今のうちに積極的に見ていただければと思います。

投稿: びんみん | 2022年2月22日 (火) 21:15

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