増田清建築ツアー(1)三木楽器本店
先日、精華小校舎愛好会の建築勉強会1周年記念として開催された、大阪に残る建築家・増田清の作品を巡るツアーに参加しましたので、その報告をします。
精華小校舎愛好会は、なんばに近い旧精華小学校校舎の敷地が売却されることになっているため、この非常に価値のある建物を広く皆さんに知ってもらおう、自分たちも勉強していこうということで活動されています。
→旧精華小学校についてはこちら
「大阪の誇り・旧精華小学校」
旧精華小学校を設計したのが増田清なので、今回の企画になったそうです。
集合場所は、本町から心斎橋筋を南に下ったところにある三木楽器本店・開成館です。
ここでのレクチャーと見学会からスタートしました。
手前に見えているのが心斎橋筋のアーケードです。
北面が近代建築らしい顔を見せています。
入口に「書籍 楽器 大阪開成館 三木佐助」の文字が刻まれています。
三木楽器は江戸時代の文政8年(1825年)に書籍業で創業し、書店であった頃の屋号が「開成館」なのだそうです。明治21年にオルガンなど楽器の販売を始めました。書店としても楽譜や音楽教科書を扱いました。
そして大正14年(1925年)に創業100周年(!)を記念して建てられたのが現在の三木楽器本店・開成館なのだそうです。
(以上は、勉強会で教えていただいたことで、基本的に以下も同様です)
窓と窓の間に四角い装飾が入るのは、大正時代に流行したセセッションという形式です。
この建物はベルリンのスタンウェイ本社を参考に建てられたらしいそうです。
こちらは心斎橋筋側の入口です。奥まっている壁面の濃い色のタイルが元々のものだと教えていただきました。
設計にあたっては、構造は増田清、内装はこれも有名建築家の本野精吾が担当しています。
本野精吾は山田耕筰と同時期をベルリンで過ごしたことがあり、当時ベルリンのスタンウェイ本社ができたばかりで、増田清は本野精吾の東京大学の後輩という関係だそうです。
>本野精吾の建物では、以前、旧鶴巻邸を紹介しました。
大正14年というのは、関東大震災(大正12年)の直後で、建物の耐震性が注目された時期で、増田清は当時珍しい鉄筋コンクリート建築の設計ができる「構造の専門家」として抜擢されたのではという話が出ていました。精華小学校についても同様の事情と推測されています。
増田清は広島でもたくさん設計をしているのですが、爆心地近くでも倒れなかったらしく、いかに堅牢な建物を建てたかということが知れます。
順に内部を紹介していきます。
入口上部にはステンドグラスがはまっています。
山か森と鳥が描かれています。
入口のドア。
カットガラス風のガラスといい、取っ手といい、みごとです。
1階の売り場です。
このしっかりした梁が増田清ならではなのでしょう。
奥に見える本棚は上部がオリジナルで、引き出し式になっています。
柱頭部分。細かく装飾が入っています。
柱に付いている照明はキツツキ。
非常に凝ったデザインです。
2階へ上がる階段。大理石がふんだんに使われています。
階段手すりの装飾。ハープでしょうか。
また別の階段です。人造石研ぎ出しで仕上げられているのですが、滑らかな仕上がりで、これは現場で職人さんが削るため、大変な作業だそうです。
美しい曲線。階段の裏側も手を抜きません。
作業する人はたぶん大変。
吹き抜けの階段が屋上階まで上がっています。
吹き抜けの中央にはフック。
滑車を付けて、楽器を運び上げたのでは?という話でした。
心許ないフックですが。
上から吹き抜けをのぞき込みます。
引き込まれるようなゾクゾクする階段です。
逆に地下にも案内してもらいました。
オリジナルらしきタイルが残っています。六角形や長方形のタイル。
エレベーターの階数表示板はクジャク風といっていいのでしょうか。
今まで三木楽器本店は、近代建築としてあるということは知っていましたが、内部がこんなに見事な建築だとは知りませんでした。強さも兼ね備えた素晴らしい建築だと思います。
つづきます。
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