山形の旅(9)酒田の百年農業倉庫
酒田市立資料館を見た後、少し先にある山居(さんきょ)倉庫を見に行きました。
山居倉庫というのは、明治26年から30年にかけて建てられた農業倉庫で、百年以上たった今でも14棟のうち12棟が残り、9棟は現役の農業倉庫(JA)として使われています。
現在2棟は「酒田夢の倶楽(ゆめのくら)」という観光物産館、1棟は庄内米歴史資料館として利用されています。
倉庫は酒田市街の南、新井田川をはさんだ対岸にあり、もともと中州(山居島)だったそうです。ここに杭を打ち、高い盛り土をして建てられています。
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山居倉庫は、当初は酒田米穀取引所の付属倉庫でした。
興味深いのは、この倉庫を建てたのは旧庄内藩主の酒井家で、働いていたのも士族だったとのことです。江戸時代の生き残りのようにも感じられます。
かつて、庄内平野の米が酒田に集められ、北前船などに積み替えられて、遠くは大阪まで運ばれていったという機能が引き継がれた形です。もちろん輸送手段は船から、鉄道、トラックへと移り変わっているのですが。
倉庫は所々に通路を開けつつ、一列に並んでいます。
この倉庫を設計したのは、以前に紹介した鶴岡の旧西田川郡役所、旧鶴岡警察署などを建てた高橋兼吉で、自然をうまく利用しつつ、米を保管する工夫が凝らされています。
ご覧のように、屋根は二重になっていて、太陽の熱を遮り、風通しをよくしています。
倉庫の入口や通路の上にも屋根がかけられ、濡れずに行き来できるようになっています。
壁も二重で、間に空間があります。
裏側にあたる西側は有名なケヤキ並木で、強い海風と西日を遮っています。
NHKのドラマ「おしん」のロケ地でもあるそうですが、記憶にありません。
同じような倉庫が並んでいながら、所々の庇がリズムを与えています。
大きく張り出した庇。
斜めから見るとこんな感じです。
こちらは大きな庇がない倉庫。
倉庫には番号がふられています。
当初は川船で米が運び込まれていました。
その記憶として、小鵜飼船(こうがいぶね)が復原展示されています。
長さ13〜15m。支流や近距離輸送用で、積載量は50俵程度だそうです。
前方に帆をかけて風も利用しました。
(案内板より)
山居倉庫裏には、元々あった山居稲荷に藩主酒井家、徳川家からもお稲荷さんが勧請・合祀されて、三居稲荷として、倉庫の鎮守になっています。
倉庫としては以上なのですが、敷地内には、大正15年建設の「東宮殿下行啓記念館」があります。皇太子(のちの昭和天皇)が行啓された記念に建てられたようです。
川側からみると、より立派な建物に見えます。
川面と倉庫はこれぐらいの高低差があります。
ついでながら、庄内を列車で回っていると、駅前に大きな農業倉庫があります。
これは鶴岡駅前の農業倉庫です。
大屋根を持つ大きな倉庫が並んでいました。木の壁も趣きがあります。
余目にも巨大な倉庫があります。
こちらは改めて紹介します。
鶴岡や余目では観光利用されていないようですが、産業観光資源としても面白いなと思いました。
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コメント
こんにちは、びんみんさん。趣のある倉庫地帯を案内して下さりありがとうございました。なんだか不思議な雰囲気ですね。倉庫が立ち並ぶ所はどこでも何か独特の時間の移り変わりを感じます。この三日間もう秋深しって感じの冗談抜きの寒さ。おまけに今朝は雨が降っていたので尚更です。例年でも8月のお盆は震えると言うそうですが、今年は異常かもって。最後に告白・・・庇を最初「屁」と読んだ自分に爆笑しました。ごめんなさい。
投稿: まあちゃん | 2011年7月31日 (日) 16:01
まあちゃんさま、こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。
そちらは寒そうですね。こちらは夏真っ盛りですので、信じられないですが。
ここは独特な雰囲気がありました。倉庫っていくつも並んでいるので余計に時間を忘れさせるのかもしれまえん。
庇と屁、たしかに似てますね。
「ひさし」って読みにくいので、ひらがなにしようか迷いました。
投稿: びんみん | 2011年7月31日 (日) 20:38
たくさんの倉庫が残っているんですね~
倉庫のひさしは車寄せでしょうか?構造がちょっと
分かりにくいので斜めアングルの写真を見たいです。
壁が二重になっているのは、断熱のため?それともそこが通路になっていて人が通れるとか・・?
ちょっと疑問に思いましたので分かれば教えてください。
投稿: ぷにょ | 2011年8月 3日 (水) 22:29
ぷにょさん、こんばんは。
倉庫のひさしは車寄せといっていいのでしょうか。
米の搬出入作業の時に濡れないためのひさしのようです。
斜めアングルも追加してみました。
壁が二重なのは断熱のためのようです。
人が通れるほどの幅はありませんでした。
投稿: びんみん | 2011年8月 4日 (木) 00:22