新潟なつ歩き(17)千石船の宿根木
「新潟なつ歩き(16)宿根木へのサイクリング」の続きです。
佐渡国小木民俗博物館を後に自転車を漕ぎ出すと、すぐにこの風景に出会います。目の前に屋根が広がっていて、谷をすっぽり家が埋めています。
これが中世以来の港町・宿根木(しゅくねぎ)です。
<佐渡国小木民俗博物館のジオラマ・宿根木付近>
模型で見るとそのすっぽり具合がよく分かります。
右上にあるT字の建物が旧宿根木小学校つまり佐渡国小木民俗博物館で、要は街の中には小学校を建てるスペースがなかったので段丘の上に建てたわけです。
集落を回り込むように自転車で坂を下ると、海岸に出ます。
浅い海岸に白い棒がぽつぽつと。
近づいてみると白い花崗岩の石柱です。
近くに解説板があって、江戸時代(1777年頃)の船つなぎ石なんだそうです。
地元での呼び名は「シロボウズ」。
材質は瀬戸内海の御影石です。
それにしても港にしては浅瀬でしょう?
享和2年(1802年)の地震で海岸が1m余り隆起して千石船が入らなくなったのだそうです。
ところで港を囲む岬に洞窟のような穴が開いているのが気になり、後で覗いてみました。
なんと向こうまで貫通しています。
これも解説板があって、相馬崎隧道というそうです。
アラメの加工・貯蔵庫として、昭和10年から5年がかりで全て人力で掘られました。大変な労力ですね。鉱山を掘る技術が生かされたのでしょうか。
トンネルの先では昭和20〜23年まで製塩が行われていました。
今は遊歩道になっています。
さて集落の全面は、前に島根の鷺浦で見たような日除け(風除け?)が立てられています。
かつての浜は観光客用の駐車スペースになっています。
宿根木地区の地図がありました。
一つ一つの建物が描かれている詳しい地図です。
集落内の道は非常に狭いです。
漁村はたいがい狭いですが、それにしても狭い。
そのうちの1本は世捨小路と呼ばれています。
石畳がすり減って凹み、年を経た味があります。
宿根木は重伝建地区で、2つの建物が公開されています。
1軒がこの清九郎家で元廻船主の家、もう1軒が金子家で船大工職人の家です。
清九郎家を見学しました。400円。
この建物はもともと江戸末期に建てられたそうです(幕末〜明治期の様子に復元)。
外観は質素で、内部も華美ではありませんが、贅沢に木材が使われ、柿渋で磨かれた床が落ち着いた美しさです。床も梁もぴかぴか。
宿根木が廻船業により、佐渡の富の1/3を集めたと言われるのは中世の話ですが、江戸時代に賑わいの中心が小木に移った後も、廻船業+千石船の造船で栄えました。その名残がうかがえます。
2階の様子。天井もぴかぴか。
裏庭があって、その向こうは崖です。
崖には穴が掘られ、天然の冷蔵庫として使われていたそうです。
決して広くはありませんが、有効活用されています。
この家を管理しているのは市ではなくて、元の所有者の方がガイドさんを雇ってされているそうです。そういう方が担っているんですね。
2階から顔を出すと石で押さえたこけら葺きの屋根が見えます。
その向こうに洋風の建物があります。
そちらも見に行ってみます。
明治42年に開局した宿根木郵便局でした。
黒っぽい板壁の建物が並ぶ中で、白いペンキ塗りの下見板張りは目立ちます。
さらに進むと小川がありました。
洗濯場ともなっていたのでしょう。
この石橋も瀬戸内の御影石か。
宿根木のシンボルとなっている三角家。
敷地に合わせた建て方がユニークです。
さらに奥には宿根木公会堂。
見た感じは昭和初期の建物です。
その脇にはかわいらしい交番(?)もありました。
さらに隣には産土神の白山神社。1304年の創建。
白山神社は船乗りの信仰が篤い神社です。
日本海側には多いようですね。
石の鳥居は尾道産の花崗岩で1773年の寄進。
北前船の航路でつながっています。
一番奥には時宗の称光寺があります。
密集した町並みからうってかわって静謐な雰囲気。
崖を削って墓石が並んでいました。
小さな集落ですが、食事のできる店が2〜3軒あります。
私はこちらの茶房やましたさんで、和定食をいただきました。
味噌を多く使った料理でした。
メインはイタリアンみたいだったのですが。
宿根木は小さな集落なので2時間もあれば十分見て回れると思います。
私には1時間ほどしかなかったので、実際には結構慌てながら回り、またレンタサイクル(電動アシスト自転車)で小木に戻りました。
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コメント
お久しぶりです^^
毎年の事ながらこちらのブログは秋祭り行脚の記事が続きます。
素晴らしい町並みの数々、一度は行ってみたいです(しかし新潟は遠いかな)
丘に囲まれた小さな港町はまるで室津のようですね。
投稿: 英ちゃん | 2010年11月18日 (木) 00:52
英ちゃんさま
ごぶさたしています。
祭りのレポートが非常に充実していますよね。
とてもいい記録になると思います。
復元された白山丸を年に1度引っ張り出す、白山丸まつりの時などいかがでしょう?
そう、室津にも行かないと。
中世の港ということで、共通点があるのかもしれませんね。
投稿: びんみん | 2010年11月18日 (木) 01:04
小川と石橋が素敵!
雨の日とか真冬の風景とかも見てみたいですね。
投稿: Bassman | 2010年11月18日 (木) 11:56
Bassmanさん、こんばんは。
小川と石橋が気に入られましたか。
とてもコンパクトな集落なので、細部まで行き届いているのかもしれません。
真冬はかなり厳しそうですが、こういう包み込まれるような空間は、外から帰ってくるとほっとしそうです。
投稿: びんみん | 2010年11月19日 (金) 02:13