観心寺恩賜講堂 〜ぐる博2009〜
今年も河内長野市の文化財公開「ぐるっとまちじゅう博物館2009」(ぐる博)が開催されています。
会期は2009年11月20日(金)〜11月24日(火)まで。
毎年エリアを決めて公開されていて、今年は市の看板とも言える観心寺・延命寺・金剛寺がエリアです。観心寺では近代建築の恩賜講堂が公開されると聞き、出かけてきました。
ちなみに過去のぐる博はこちら
→ぐる博2006、ぐる博2007、ぐる博2008
観心寺へは、普通は河内長野駅からバスが一般的ですが、私は三日市町駅から自転車で出かけました。
途中、いい雰囲気の日之下橋があったので一休み。
コンクリートのアーチが欄干に取り込まれたデザインで、昭和12年に架設されています。
すぐ上流には大同製薬(株)長野工場がありました。
道路側からは平屋に見えますが、川に張り出した3階建ての建物で、旅館のようにも見えます。ちょっとこの写真では分かりにくいですね。右から水路で建物内に水が導かれていて、いまだに現役の水車小屋なんです。漢方薬を粉砕しています。会社は四條畷から移転してきて、昭和24年に建てられたそうです。
河内長野には生駒山系とともに多くの水車小屋がありましたが、今はこれだけです。
上流側から見たところ。
堰堤が築かれ、左側にある取水口から水路が工場に向かって伸びているのが分かります。
さらに進んで観心寺の手前にある旅館・松中亭にも寄り道しました。
明治期の部材を使って大正前期に建てられ、大正14〜15年に移築されたそうです。離れは昭和10年頃。『河内長野の近代建築』(平成14年、河内長野市教育委員会)にも紹介されています。
泊まる必然性がないけれど、泊まってみたいような宿です。
などと寄り道しつつ、観心寺に到着。
特別公開でも入山料500円は必要です。
あまり時間がなく、急いで恩賜講堂を目指します。
途中、石造の柵の柱が並んでいました。
これが観心寺恩賜講堂です。
もともとお寺の建物ではなく、昭和3年に京都御苑で行われた昭和天皇即位御大典で建設された饗宴場の建物を下賜され(だから恩賜)、昭和4〜5年に移築された建物です。楠木正成ゆかりの地ということでいただけたのでしょうね。
『河内長野の近代建築』によれば、饗宴場は3分割され、1つは観心寺、1つは関西大学の威徳館となり、昭和28年にさらに千里山の千里寺の本堂・講堂として再移築、1つは橿原神宮の建国会館から県営橿原会館となったものの平成10年の台風で破損・解体撤去されたそうです。
(追記)
<絵葉書 橿原神宮・建国会館の大講堂>(2010.3.10記)
なので、もっとも原型に近いのがこの観心寺恩賜講堂ということになります。
当初の設計者は、池田谷久吉だそうです。
熊取交流センター煉瓦館(昭和3年)、金光教玉水教会(昭和10年)などが現存。
『史蹟の加太友ヶ島』(昭和24年)という著書があるのも気になります。
今回、ようやく中に入ることができました。
中に入ると外観から想像できない天井の装飾に圧倒されます。
きちんと補修されているのか、非常にきれいです。
見上げると目が回りそう。
ぐるぐると。
折り上げ格天井になっていて、植物模様で埋めつくされています。
またくどいほど電球を付けたシャンデリア。
3基が残っています。
真下から見るとこうなります。
壁面には小型の電灯が付いています。
壁紙もまた細かく模様の入った手の込んだものです。
外廊下に出るとお寺のような造りで、電灯だけが洋風になっています。
仮設建築なのに80年ももっているってすごいことですね。
宝物館も公開されていましたが、写真が撮れないのでなし。
仏像もいいのですが、踏んづけられているのに不敵な笑みを浮かべる邪鬼(反省の色なし)が印象的でした。
最後に観心寺の金堂(室町期のもので国宝)を遠望。
こちらは以前に見たことがあります。
ところで、余談的にちょっと面白いのが星塚です。
観心寺は弘法大師が北斗七星を勧請したことから再興したので、大きな意味を持つ塚です。
金堂を囲むように7つの星塚があり、それを巡ってお参りするようになっているのがユニークです。
こういうものにはとても惹かれます。
観心寺恩賜講堂は11月24日(火)まで公開されているので、この機会にいかがでしょうか。
| 固定リンク
「建築」カテゴリの記事
- 野外博物館・四国村(香川県高松市)(2024.07.14)
- 屋島ケーブル跡(香川県高松市)(2024.06.24)
- 北白川の住宅地を歩く(京都市左京区)(2024.06.06)
- 岡ビルから南の建物(愛知県岡崎市)(2024.02.16)
- 六所神社の彫刻(愛知県岡崎市)(2024.02.11)
「日常旅行(大阪)」カテゴリの記事
- 2022年もよろしくお願いします(2022年初歩き)(2022.01.02)
- トンガリ屋根の市営住宅(東大阪市)(2021.08.02)
- 野里を歩く(大阪市西淀川区)(2021.07.25)
- 姫島を歩く(大阪市西淀川区)(2021.06.13)
- 住吉大社門前の道(大阪市住之江区)(2020.01.03)
コメント
こんばんは。
歓心寺恩賜講堂のことはまーったく知りませんでした。
何という天井装飾の華やかさ、美しさ!
ぶっ飛びました。。。
お寺では金色を主体とした豪華絢爛な天井はあると思いますが、これほど多くの色を使って美しいものは珍しいのでは?
今度また公開される機会があれば、何が何でも駆けつけます!
投稿: ひろ009 | 2009年11月24日 (火) 21:51
ひろさん、こんばんは。
とても華やかでしょう?
即位式典用だからとくにということでしょうが。
本文に書き漏らしましたが、演奏会でも時々使用されるそうです。
いろいろ調べていると、3分割されたはずが、同志社高校の「醇化館」についても饗宴場の建物を利用したという記述が。
→asahi.comの記事
橿原神宮の建国会館については、賜饌場の移築とするものもあり、ちょっと分からなくなってきました。
もうちょっと情報を整理した方がよさそうです。
投稿: びんみん | 2009年11月24日 (火) 23:46