浜寺昭和町5丁の住宅(堺市)
浜寺住宅地は、堺市の南海本線・浜寺公園駅の東側に広がる別荘的な郊外住宅地です。
大正7年に地元資本主体で設立された浜寺土地(株)により、大正7〜8年に第一期の土地整備が行われました。その後、浜寺土地(株)主導で、昭和5年に浜寺土地区画整理組合が設立され、隣接地が昭和11年、13年、15年と開発施行されました。
以前、堺市の浜寺住宅地のうち、浜寺昭和町1丁〜3丁を紹介しましたが、今回、浜寺昭和町5丁を紹介します。4丁、5丁は、一番最初に開発された地区にあたります。
いくつかの建物は写真で見ていたのですが、なかなかそれが現れませんでした。あせりましたが、結局、歩くルートの関係で、洋風の建物はみな一ヶ所に固まっていたということです。
まず、O家住宅から紹介します。大正時代に建った和館(現存せず)に、昭和3年、洋風接客棟として増築されたスパニッシュの洋館です。
星形窓と窓の上のイスラム風装飾が目をひきます。
窓の上に緑の点がありますでしょう?
拡大すると花柄レリーフのプレートです。
続いて、O家住宅の東隣にある阪之上家住宅。登録文化財なので、名前を出していいでしょう。
こちらは大正11年、表には出てませんが煉瓦造だそうです。
住宅らしからぬインパクトのある外観です。
実現しなかった浜寺ホテルの計画の一部が使われたと解説されています。
(ひろさんのブログで拝見した気もするのですが、見つけられませんでした)
1・2階の窓の間に装飾が入るのはセセッション風ですね。
石を貼ってみたり、窓に凝った面格子を使ったり、いろいろ装飾を加えています。
両家を同時に眺めるとこうなります。
左がO家住宅、右が阪之上家住宅。
これだけでなく、さらに・・・
道のずっと先には、ヴォーリズの近江岸家住宅のスパニッシュ煙突が見えるんです。
狙ったんですか、ヴォーリズさん(何を?)。
小さな写真では拡大しないと分かりませんが、肉眼では見えています。
続いて、阪之上家住宅の東隣にあるのが、F家住宅です。
昭和8年に建ちましたが、木造です。
丸々の洋風住宅です。
東側の玄関はこんな風に半円のバルコニーが飛びだしています。
テラコッタ風装飾は、花の図案でしょうか。
こうして紹介してくると洋風の町並みかと思うかもしれませんが、それは少数派で、近代和風が主体です。左側は阪之上家住宅の塀で、道路、水路を挟んで右に和風住宅の焼き板塀が続いています。
なお、この水路は排水のためらしく、地区内に逆L字型に引かれています。
同じ場所でもう少し右を向くとこんな感じ。
どこかの歴史的街並みのようです(浜寺も既に歴史的街並みですが)。
和風住宅の玄関部分はこうなっています。
玄関は隙なく石畳、側溝は花崗岩の切石2本で挟み、煉瓦が敷かれています。
ちなみに煉瓦の刻印は五光星でした。
私は見たことがありません。
同じ五丁の端の方にはこんな住宅も。
きれいすぎるので、新築でしょうか。
実は上の建物を見る前にこちらを先に見つけました。
この頃、昔風の本格的な洋館が新築されていて、分かりにくくて困ります。
街並み景観的には良いことなんですけどね。
○この記事には下記の報告・論文を参考にしました。
『大阪府の近代化遺産報告書』、2007年
吉田高子氏「大正7年開発の浜寺住宅地とその屋敷地構成について」(『近畿大学理工学部研究報告』第40号)、2004年
三浦要一氏・住田昌二氏・多治見左近氏「浜寺地区における郊外住宅地形成過程」(「平成2年度日本建築学会近畿支部研究報告集」)、1990年
多治見左近氏・三浦要一氏「堺市浜寺地区の郊外住宅地形成」(「日本建築学会計画系論文報告集」第436号)、1992年
水野佐八香氏・小浦久子氏「歴史的建物資源とその地域環境特性の持続に関する研究その2 —堺市・浜寺地区の景観に現れる地域環境の特性—」(「平成14年度日本建築学会研究報告集」)、2002年
○関連記事
「浜寺昭和町1〜3丁の住宅」
「浜寺昭和町4丁の住宅」
他の郊外住宅地のインデックスはこちらです。
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コメント
こんにちは。
おーっ!浜寺・泉大津と怒濤の探訪記ですね。これからじっくり読ませて頂きます。
昭和町5丁のこの一画は凄いでしょう?
私も実家に帰った際にこのあたりを歩くと、いつも”ええなあと感じ入っております。
投稿: ひろ009 | 2009年5月24日 (日) 21:51
ひろさん、こんばんは。
浜寺昭和町5丁のこのあたりは確かに凄いですね。
並びたつ存在感は行かないと分からないかなと思います。
浜寺昭和町は有名どころなので軽くしておこうかとも思いましたが、「浜寺昭和町」で検索される方が多いので一通り書いておきました。
ひろさんは記事にされてませんでしたでしょうか?
リンクしたいと思いましたが、見つけられませんでしたので。
書きたい記事がたまりにたまっていたので、怒濤のUPをしましたが、まだ10本分以上あります。
だんだん時間がずれていく・・・
投稿: びんみん | 2009年5月24日 (日) 22:17
浜寺昭和町5丁の緑色の瓦屋根の大きな館は、戦後に建てられた建物だと思います。正確な建築年は知りませんが、昭和30年代頃からあります。NHKの朝の連続TV小説『走らんか!』(1995年)で使われました。俳優のKさんが勝手口から出てくるシーンを覚えています。
投稿: hamashou | 2012年5月 4日 (金) 11:05
hamashouさま、はじめまして。
緑色の瓦屋根の住宅についての情報をありがとうございます。
戦後だけれど古いものなのですね。
ドラマのロケにまで使われているとは。
たいへん助かりました。
投稿: びんみん | 2012年5月 5日 (土) 00:11