紡績で建った旧四郷村役場
四日市で用事を済ませた後、市内の四郷地区に向かいました。
産業遺産の村をみるのが目的です。
近鉄四日市駅で八王子線に乗ります。
高架駅の他の線とは別に、八王子線と内部線だけ地上です。
やってきた電車はおもちゃみたい。軽便鉄道の生き残りなんだそうです。軽便鉄道の名前は郷土史などに出てきますが、ここでは現役。
もちろん中も狭くて一列ずつの座席しかありません。座席の向きが←−→の三両編成で短い路線を行ったり来たり。ワンマンなので終点に着くと運転手さんがかばんを持って反対端の車両へ。
のんびり3駅で終点の西日野駅に到着します。
昼の小雨はやんで、空も明るくなってきました。
駅を出たまま、まっすぐ天白川沿いを歩きます。
今は四郷という地名はありませんが、明治22年から昭和18年までは四郷村がありました。天白川沿いに東から東日野、西日野、室山、八王子の四つの集落があるので四郷村です。四郷村は昭和18年に四日市市に合併されます。しかし、今も地区としての一体感を持っているようです。
天白川は低い丘陵地に細長い平地をつくって流れ、旧集落は川の北側に並んでいます。
昔は八王子まで線路が伸びていましたが、昭和49年の豪雨で道床を崩され、短縮されてしまいました。
途中、丘の上に塔が見えます。
室山地区まで歩いてくると右手(北)に坂道があり、登っていくとこの建物が建っています。
旧四郷村役場の建物で、今は四郷郷土資料館になっています。開館日は土曜日のみ。ここがとりあえずの目標です。
この役場は大正10年、東洋紡績社長だった第十世伊藤傳七翁が、地元に6万円を寄付して建てました。当時、全国一の村役場ともいわれたそうです。伊藤傳七翁は室山の出身で、四日市で三重紡績を興し、三重紡績と大阪紡績が合併して東洋紡績となったのでした。ちなみに綿業会館建設に多大な寄付をした東洋紡績の岡常夫専務も、三重紡績出身だったようです。寄付に積極的な気風があったのでしょうか。
設計者は野田新作といわれます。
床下換気口を覗き込むと、ユニークなデザインです。
○に×のマークに意味があるような、ないような。
「四」が5つで「四郷」・・・というのも苦しいか。
館内に入ると、地元のおじさま方が事務所に詰めておられました。
ボランティアで入っておられるようです。
無料なので記名だけして、「四郷ふるさと史話」という冊子があったので買い求めました。
近代化遺産の日の一斉公開に入っているので、2階にも登れないかなあと淡い期待があったのですが、普段通り1階のみの公開でした。2階は傷んでいて危険があるそうです。「二階にはアールデコ風の装飾が施された天井をもつ村会議場や小会議室」があるそうなので、見れなくて残念です。
階段も眺めるだけ。
踊り場の大きなアーチ窓がポイントになっています。
面白いのは木の階段の手前の部分に、雷紋?の布地が貼ってあることです。もしかして地元の絹でしょうか。
裏側から眺めると1階は下見板、2階はハーフティンバー(木の骨組みを露出させた様式)の縦長格子に窓がぴったり納まっています。リズムのある壁面。
展示室はいくつかに分かれていて、展示品がぎっしり。
それも養蚕、製糸、製茶、醸造(酒・醤油・味噌)、農業など、産業関連のものがいっぱい。ここ四郷は、近代産業発祥の地のひとつと言われています。明治の「殖産興業」という言葉が目に見える形であります。
四郷の近代化には、伊藤小左衛門翁(生糸と茶の工場生産)、伊藤傳七翁(紡績)という2人の先覚者の功績が大きかったそうですが、何が彼らを生んだのか、それが気になります。
吉田初三郎風の鳥瞰図も飾られていました。
もう一枚、さらに大きな鳥瞰図もありました。
村のレベルを超えています。
旧四郷村役場のある丘からは四日市の工場群を眺めることができます。
この村の人たちは役場の塔の3階から、発展していく四日市の様子を見ながら、自分たちの始めたことを誇りに思っていたかもしれません。
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コメント
はじめまして。
この近所に住んでます。
確か、親戚の叔父さんがここの管理に来ているようです。
こういう形で地元を見ると、感慨深い。
なんか誇りに思います。
ありがとうございます。
投稿: kman | 2009年4月 3日 (金) 21:17
kmanさん、はじめまして!
コメントありがとうございます。
ご近所にお住まいなんですね。
しかも、親戚の方が資料館の管理に来ておられるのですか。私が行ったときも何人かの方がいらっしゃったので、もしかしたらお会いしたかもしれません。
何かエピソードをご存じでしたら、よろしければご紹介下さい。
誇るべき町だと思います。
三重のことはたまに書きますので、また覗いてみてください。
投稿: びんみん | 2009年4月 4日 (土) 00:41