博覧会跡の岡崎公園(京都)
京都国立近代美術館で「アーツ&クラフツ展」を見た日のこと、この機会に岡崎公園を歩いてみました。岡崎公園には京都国立近代美術館をはじめ、大きな建物が建ち並んでいますので、公園というイメージは薄いかもしれません。でも明治に始まる古い公園なんです。
<明治22年陸地測量部発行・京都中部実測図より>
公園ができたきっかけは、明治28年にこの場所で開かれた第4回内国勧業博覧会と平安遷都千百年紀年祭です。平安神宮もこの年に竣工しました。博覧会開催に合わせて日本最初の市街電車として京都電気鉄道会社が開業、会場までの路線もできました。ちなみに琵琶湖疎水は明治23年で、明治24年にできた蹴上の発電所が電気を供給しました。
その直前の様子を示すこの地図を見ても分かるように、用地買収をした当時は田んぼや空き地の広がる土地でした。もっともそれ以前、加賀前田藩の屋敷があった場所なので、不便な場所だったわけではありません。
博覧会場の跡地を整備して、明治37年に岡崎公園となりました。
現在の面積は10万2688㎡。
緑の枠で囲んだのが公園の位置です。
<大正13年・京都衛戌地図より>
大正末にもなると建物が建ち並び、周辺も都市化しています。
しかし、よく見ると動物園は今と同じですが、図書館は今よりゆったりと建ち、京都市美術館は商品陳列場ですし、桜馬場があります。なにより、今は野球場になっている場所が博覧会場と書かれています。
岡崎公園では、大正時代に2つの大きな博覧会が開かれています。
大正4年の大正天皇即位大礼記念の「大典記念京都博覧会」と大正13年の「東宮殿下(昭和天皇)御成婚奉祝万国博覧会参加50年記念博覧会」です。この後者の建物ではないでしょうか。
以上、博覧会についてはこちらを参考にしました。
より大きな地図で 近代の公園 を表示
岡崎公園の現在の様子です。
今では初めに紹介した建物に加え、京都会館、京都市美術館別館(旧京都市公会堂東館、昭和5年)、京都市勧業館(みやこめっせ)などが立ち並んでいます。
公園の南と西は疎水に囲まれています。
京都市美術館から順に見ていきましょう。
京都市美術館は、昭和3年の昭和天皇即位の大典(大礼記念京都大博覧会を開催)を契機に、昭和8年「大礼記念京都美術館」として完成しました。
洋風の建物に和風の屋根が載る帝冠様式です。
正面の門はずしっと重量感があります。
>内部についてはこちらの記事をどうぞ
裏側に回ると和風庭園があります。
この美術館、4面ともに入り口があり、隙がありません。
裏手には同じ配色の事務所(昭和8年)も建っています。
裏門には表門と違ってこぢんまりした石柱が立っています。
気になっていたら、建築探偵つきのたぬきさんによれば、武田五一設計の京都陳列館の門柱だそうです。なんと。
クローズアップで確認してみてください。
京都市美術館が長くなりましたが、向かいは京都府立図書館です。
明治42年に武田五一設計で建てられた図書館を一部保存しています。
やわらかいアーチがやさしい印象。
さて、公園は平安神宮の参道としての役目も果たしています。
そこにそびえる大鳥居は昭和4年の完成なのでこれも大典記念なのでは。
参道を歩いていくと、右手に煉瓦と石の柱があります。
意味ありげなのに何の説明もありません。
この柱についても、建築探偵つきのたぬきさんが説明しておられます。すごい推理。
大正4年の「大典記念京都博覧会」の会場ゲートの門柱なのだそうです。それならプレートでも設置したらいいのに。
参道の左側が一番、「公園」らしい場所かもしれません。
緑に覆われ、木が並ぶスペースです。
最後に京都市動物園についても。
動物園は明治36年(1903年)開園です。
写真は昭和2年のカバ舎を外から見たところ。塀は煉瓦壁でしょうか。
他に大正12年のゾウ舎もありますし、また中にも入ってみたいと思います。
このように数多くの博覧会が開かれてきた岡崎公園には、様々な博覧会、記念事業の痕跡が残っています。
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コメント
岡崎公園のあのそれこそ書いておられるように、「意味ありげ」な煉瓦の何かのモニュメントのようなものについて気になっていまして、検索かけましたら、こちらのページがヒットしましたので、お邪魔しました。
大正4年の「大典記念京都博覧会」の会場ゲートの門柱、ということで、内国勧業博の時のものではないのですね。のどに刺さっていた魚の骨が取れたようで、スッとしました。有難うございました。
投稿: 遊星 | 2010年2月16日 (火) 16:54
遊星さま、はじめまして。
コメントありがとうございます。
お役に立てたようで幸いです。
もっとも私も、つきのたぬきさんの説明を紹介しただけですが。
よろしければ、またお越しください。
投稿: びんみん | 2010年2月16日 (火) 23:43
京都会館の職員ですが、平成24年の3月24日(土)に、「第4回内国勧業博覧会と京都」というテーマで公開講座を企画しております。
講師は、首都大学東京の國雄行先生です。
ご興味のおありの方いらっしゃいましたら、京都会館の鈴木までご連絡下さい。
投稿: 鈴木 | 2010年12月10日 (金) 13:18
京都会館の鈴木さま
お知らせありがとうございます。
第4回内国勧業博覧会についての講座があるのですね。
興味あります。(これ平成23年ですよね?)
これは鈴木さんに連絡をしておけば、案内が届くという意味でしょうか。
メールアドレスをご記入いただいているようですが、メールアドレスは表示されません。
メールアドレスを掲載した方がよろしければ掲載します。
よろしくお願いします。
投稿: びんみん | 2010年12月12日 (日) 11:38
びんみんさん、お問合せいただき有難うございます。
第四回内国勧業博覧会の講座は、来年ではなく、平成24年の3月24日です。
来年の京都会館歴史文化講座では、6月に六勝寺、9月に南禅寺の以心崇伝、12月に琵琶湖疏水、そして年明け3月に内国博を行う予定です。
詳しい応募方法につきましては、来年3月頃にチラシや京都会館のホームページなどで発表いたしますが、もしご連絡いただければ、お答えできる部分もあるかと思います。
京都会館の連絡先は、ホームページで検索いただけたらと思います。
投稿: 鈴木 | 2010年12月24日 (金) 08:48
鈴木さま、ご案内ありがとうございます。
12月の琵琶湖疎水も興味があります。
1回ごとの参加も可能なのでしょうか。
また発表のある頃に確認させていただこうと思います。
投稿: びんみん | 2010年12月28日 (火) 13:51
第4回内国勧業博覧会で大阪の朝日麦酒と愛知の丸三麦酒との間で派手な宣伝合戦が行われたとの話を研究している者です。なんらかの資料あるいはとっかかりのヒントを頂けないでしょうか。愛知県在住ですが京都まで出かけることも厭いません。
投稿: はるほ | 2011年1月25日 (火) 16:44
はるほさま、コメントありがとうございます。
私はこの博覧会について詳しく知らないのですが、上のコメントにあるように、京都会館の鈴木さんが第4回内国勧業博覧会についての講座を準備されているそうですので、問い合わせてみられてはどうでしょうか?
人任せですみません・・・
投稿: びんみん | 2011年1月25日 (火) 23:07
早速のご応答有難うございました。も少し調べを進めてから鈴木様に直接照会してみます。
投稿: はるほ | 2011年1月26日 (水) 14:56
はるほさま、
お役に立てずにすみませんが、よろしくお願いします。
投稿: びんみん | 2011年1月29日 (土) 00:37
びんみんさん、有難うございます。
12月の「琵琶湖疏水と京都」、3月の「第四回内国勧業博覧会と京都」それぞれ1回ごとの参加も可能です。
第3、4回の受付は9月1日からを予定しております。
8月下旬頃には京都会館のホームページに情報を掲載する予定です。
近くなりましたら、そちらをご覧ください。
宜しくお願いいたします。
投稿: 京都会館鈴木 | 2011年2月 4日 (金) 13:28
鈴木さま
ご案内ありがとうございます。
9月になったらですね。
できれば参加したいと思いますので、よろしくお願いします。
投稿: びんみん | 2011年2月 6日 (日) 01:33
ここに載っている京都会館の歴史講座、毎回楽しみに行っています。最終が「第四回内国勧業博覧会」ですね。國先生のお話しが大変楽しみです。
毎回感じるのは、司会をなさっておられる方(鈴木さん?)が、次回の講座の内容をズバッと一言で魅力的に語られるところです。それにつられてついつい毎回参加しています。
よく勉強されているといつも感心しています。
歴史がご専門の方なのでしょうか?
こうした方も京都会館にはいらっしゃるのですね。
投稿: 石井 | 2012年1月11日 (水) 09:05
石井さま、はじめまして。
コメントありがとうございます。
鈴木さまにお答えいただいた方が良いので、お知らせはさせていただきました。
次回の講座は3/24(土)14時〜の
「第4回内国博覧会と京都」ですね。
大変興味深いので、繁忙期ながら申し込んでみようと思います。
思い出させていただいて、ありがとうございました。
投稿: びんみん | 2012年1月12日 (木) 00:56