青島・煙台の旅(21)青島の奇怪な官邸
<信号山から見た青島迎賓館>
東西の建築を寄せ集めて粘土で固めたような、何とも奇っ怪な建物。
青島迎賓館は、青島を代表するドイツ建築です。
信号山の南山麓に、ドイツ総督官邸として建てられました。
1905年着工で、1908年竣工。設計者はドイツ人のラツァロヴィッツ、建築監督はシュトラッサーです。
1914年に日本が青島を占領すると駐青島守備軍指令官邸となりました。1922年に青島が返還されると膠澳督弁官舎、1934年に国民党が青島を接収すると迎賓館と改称され、日本再占領期の1942年から45年までは国際倶楽部が一時移ってきました。新中国となってからは再び迎賓館として、国家指導者と外国賓客を接待するホテルとして使われました。1999年から博物館として公開されています。目まぐるしい変遷です。
ちなみに入場料は15元(冬の閑散期は10元)でした。
まずは正面(西面)から。
細部に至るまで、いろんな要素が詰まっています。花崗岩の壁面は生物のようです。
ユーゲント・シュティールの影響を受けているといいますが、ここまで自由奔放とは。
ドイツの総督官邸という権威的な建物がこんなに奇抜な形で中国に残されたというのは時の綾といえるでしょうか。
中央に見えるちょこっとした出っ張りは、ドラゴンの彫像です。
北面は食堂の外壁。
ここはまだシンプルな方。
東面は花崗岩の荒々しさが目立っています。
ある意味、遊園地的です。
最も整った南面。
ベランダを挟んで塔がいくつも立っているようです。
一周して東の正面に戻りました。
こちらにも小さなベランダがあって、そこは総督の部屋です。
外観だけで、もう十分という感じですが、これから中に入ります。
ユーゲント・シュティール風アーチの玄関です。
中に入ると大ホールに出ます。2階まで吹き抜けの大空間。他の部屋はこの大ホールを囲んで配置されています。そして壁を巻くように2階に上がる階段があります。
1階奥の窓にはマリア様の描かれたステンドグラスがあります。残念ながら近くから撮り忘れていました。
ヨウタロウさんが中国・青島@建築探訪記で紹介されていますので、ご覧ください。
振り返るとこんな感じ。ふんだんに使われた木と白い壁の落ち着いた空間です。
右下に暖炉が見えますが・・・
近くで見るとこんな思い切ったデザインです。
緑釉のタイルが渋めの色合い。
こちらは別の部屋の暖炉で、花の模様が繊細です。
1957年に毛沢東が滞在したという喫煙室のステンドグラス。
青島の海なのでしょうか。
ディナールーム。もう一つ小さなダイニングルームもあります。
東面には温室がつくられています。
打って変わって鉄骨とガラスの空間です。
1階を1巡したら2階へ。
布でできたような柔らかな表現の階段手すりです。
2階にはL字型に回廊が巡っています。内にもベランダのアーチ。
総督夫妻の寝室です。
北西隅にある林彪の部屋。他の2階の部屋から1段下がっています。
室内装飾の数々を集めてみました。
左から林彪の部屋の漆喰細工、2階廊下の照明、非公開の部屋の内側出窓です。
2階の南側ベランダからは広い庭越しに青島の住宅地が見えます。
ベランダに出る部屋は子供部屋というのですからなんともぜいたく。
とことん凝った総督官邸でした。
青島で建物を見るなら、ここは外せません。
○参考資料
「青島迎賓館解説リーフレット」
竇世強・李明『画説 青島老建築』、2004年、青島出版社
| 固定リンク
「建築」カテゴリの記事
- 野外博物館・四国村(香川県高松市)(2024.07.14)
- 屋島ケーブル跡(香川県高松市)(2024.06.24)
- 北白川の住宅地を歩く(京都市左京区)(2024.06.06)
- 岡ビルから南の建物(愛知県岡崎市)(2024.02.16)
- 六所神社の彫刻(愛知県岡崎市)(2024.02.11)
「海外旅行」カテゴリの記事
- 青島・煙台の旅(30)旅を終えて(2008.10.05)
- 青島・煙台の旅(29)青島湖南路から孔子記念館へ(2008.10.05)
- 青島・煙台の旅(28)青島ドイツ監獄など(2008.10.02)
- 青島・煙台の旅(27)青島駅から中山路(2008.09.29)
- 青島・煙台の旅(26)青島八大関をさまよう(2008.09.15)
コメント
青島と鎮多尾は別である。
投稿: ガーゴイル | 2022年1月21日 (金) 12:06