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2008年4月16日 (水)

講演会「藤井厚二の住宅・八木邸」

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「海岸通建物物語3」企画の講演会を聴きに行きました。
八木邸というのは、寝屋川市香里園の住宅地に建つ和洋折衷住宅で、設計者は藤井厚二(1888-1938)です。山崎の「聴竹居」で知られる方。八木邸はそのあまり知られていない現存作品だそうです。昭和5年(1930)に建てられました。
紹介記事はこちらをご覧ください。

最初は邸内の写真のスライドショーを見せていただきました。
この撮影のために、部屋を片付け、しまわれていた灯りなどを出してきたそうで、電気スタンド、シェード、テーブル、椅子など、藤井厚二がデザインしたものが残っています。「聴竹居」では失われているそうなのに。端に寄せてすっと1本線を入れたデザインなど、好みだったのか多用されています。洋風要素は驚くほどモダンです。

ベッド脇の通風窓や床下から屋根裏に抜ける風の道など、通風に配慮されています。快適そうと思うのですが、お住まいになった方は、「冬は寒い」のだとか。実感のある感想です。

こんな素敵なお宅ですが、お住まいの方がおられるので、公開予定はありません。
ただ、離れに住まれている八木さんは庭がご趣味なので、来年以降、できたら日を決めて庭を公開したいとおっしゃっていました。

そして、この日の話題は住宅の保存の話へ。
運の良いことに、藤井厚二の記事を書いたという竹中の方が来られていて、あちこちの近代の住宅の状況について伺うことができました。どこそこは近々公開可能性あり、など貴重な情報なども。

住宅の保存はいろいろ厄介な問題があるそうです。
・第一種低層住居専用地域の指定が
 かかっていると収益活動がしにくい
・相続税の問題
・重要文化財になると9割は修繕費を
 負担してもらえるが、修理代が10倍
 かかるので意味がない。
・所有者の方が心情的に他人に入って
 もらいたくないことがある
・近所の方が残したいと思うことが大事
 などなど

結局、「この建物は素晴らしい」という気持ちをとくに近所の人に伝えていく必要があるようです。そのためにはマスコミに取り上げてもらうのが効果が大きいということでした。

建物を残すためのソフトな運動の方法はないかなと考えたら、気に入った建物をスケッチするのがいいのかなと思います。写真だと一瞬ですし、怪しまれる可能性もないではないですが、スケッチなら「絵に描かれるということは、いいものなんだろうか」という近所の方の目に一定時間さらされるでしょうから。

そして既に公開されているものはできるだけ訪れる。

自分には何ができるのかなと考えさせられた会でした。

○関連記事
  香里園の住宅
 

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