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2008年2月12日 (火)

写真の歴史×歴史の写真

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この2日で3つの写真展を見てきました。
そのうち2つを紹介します。

ひとつ目は大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室の「写真の美術×美術の写真」展。
昭和初期の大阪の写真家の作品から現代の写真までです。

昭和初期の写真は前衛的な作品が多くありました。見たまま写すのでは芸がないと思うのでしょうか。いろいろ実験的な試みをしています。ドライアイスが消えていく様子を写して、時間の経過を記録した写真や、描かれたものと写されたもののズレを写した写真などもあります。
個人的な感想は、頭でいろいろ考えているけれど、どうも頭先行で・・・という感じがしました。

むしろ現代の作品の方が好もしく思いました。
気に入ったのは、杉本博司さんの長時間露光の作品。ひとつは映画館内で映画を上映中、ずっとシャッターを開きっぱなしで撮影した作品です。映画の光を捉え続ければ白い光となる・・・という理屈はあるようなのですが、理屈をさておいても、静かに美しい。なにより、被写体がアメリカやカナダなどのクラシックな映画館で、その装飾のぜいたくさに驚きます。なんだかスクリーンが申し訳なさそうに見えてしまうぐらい。建築好きなら見入ってしまうはず。
もうひとつも杉本さんの海や湖を長時間露光した作品。水面と空が上下半分ずつでそれ以外は何もない静かな世界です。波の重ね合わされた波が広がり、水平線がかすむ魅力的な静けさです。

他には、大勢のエレベーターガールで有名な、やなぎみわさんや、王女に扮した森村泰昌さんの、大画面の作品も展示されています。

大阪に偏った内容ではありますが、写真史の一辺を見ることができた写真展でした。
3月23日まで開催中です(水曜休み)

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ふたつ目は天神橋ギルドギャラリーの矢田淳子写真展「記念写真」展です。
何かのルールに基づいて写真を撮る場合、ルールは明快な方がいいと思います。この写真展の場合は、「記念写真を撮った場所で、同じ人の写真を撮る」です。シンプル。いずれも2人の写真で、それは親子であったり、兄弟姉妹であったりします。もとになった記念写真、そして新たに撮った二人の写真がペアで収まっています。いわば2人の歴史の写真。

作品自体はシンプルなものですが、頼んで記念アルバムを見せてもらい、写っている人を確認し、場所を確認し、本人に来てもらい、現地に行って撮影という作業があるはずです。記念写真を囲んで話に花も咲くでしょうし、撮影場所が変わっていること、変わっていないこと、2人の関係などにも思い至るはずです。照れもあるでしょう。そんなこともひっくるめてのもうひとつの記念写真。十分に「あったまって」撮られた写真はいい表情をしています。1枚の記念写真の外に派生するもろもろのものも含めた写真家の企てなのでしょう。写真の可能性を感じさせてくれました。
(出発点は頭であっても)頭だけで撮った写真より、私はこういう写真の方が好みです。

こちらの写真展は2月24日(日)まで。18日は旧廊。
13〜20時。金・土は〜21時。日は〜18時。

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