2つの門前駅(島根県出雲市)
出雲大社の門前には2つの駅があります。
正確には1つは路線が廃止されているので、今は駅ではないのですが、建物だけは残っています。
それがこの旧JR大社駅。見ての通り、非常に立派な和風の駅舎です。大正13年(1924年)に建てられ、平成
2年(1990年)に大社線(出雲市〜大社)が廃止されたあとも、こうして保存されています。
位置関係を示しておきましょう。こんな感じです。
見ての通り、神社まではかなり距離があります。
駅舎だけでなく、線路やプラットホームまで、そのまま残っています。
遙か彼方に白い鳥居が見えますか?
あれが大鳥居です。
なお、この駅舎には、建設当時、出雲大社の神苑拡張計画に携わっていた伊東忠太が助言をしたという説があるそうです。
線路跡は道路に転用されています。
ちなみに左に見える尖塔は、江戸時代に砂丘地だったこのあたりを開拓した大梶七兵衛の紀功碑です。大正元年につくられたものを戦後復元したもの。
大待合室はこのように広々としています。
折上の格天井に和風のシャンデリア。
基本的に和風ですが、洋風の要素も加えられています。
出札口にも破風がついています。
出札口は5つもありますが、説明板によれば、昭和47年には一日の平均乗降人員が4000人だったらしいので、それだけの必要があったのでしょう。
こういう懐かしいものもあって、なごみます。
そして、気に入ったのがこれ。
職人さんが、その場で思いついてバーナーで描いたような因幡の白うさぎです。
大社駅前には、このような洋風の建物も残っていました。
近くに大正期の近代化遺産が2つ(川上食堂と高間旅館)あるそうです。
これが食堂に該当するかどうかは不明。
さて、もう一つの門前駅は、こちらは現役の一畑電気鉄道(株)出雲大社前駅(旧大社神門駅)です。
一畑電鉄は元々、出雲市から宍道湖の北にある一畑薬師に参拝するための路線で、その後、松江市、そして出雲大社と結ばれました。昭和5年に路線が開通したときに建てられたこの建物は、斬新な洋風建築です。
「当時、風変わりな駅舎として評判だったようだ」(「島根県の近代化遺産」)とのことですが、今でも十分風変わり。
昭和初期らしく、外壁にはスクラッチタイル。これは普通。
なにより素晴らしいのはこの内部!
南・西・北の3面にはそれぞれ違う形の色ガラス窓がはめられ、刻々とその光を変化させます。
これは夕方の写真。南向き。
シャンデリアは最近のものだと思います。
こちらは昼時の北向き。
天井の尖った教会のようなアーチが特徴的です。
梁の部分などを見ても、それぞれ違った幾何学模様を彫り込んでいます。
そしてこのカーブした出札口。
もう少し近づくとこうなっています。
相当モダンなデザイン。正月3が日はこの窓口を使うという話もあります。
国鉄が伝統の“和”なら、こちらは先端の“洋”でという対抗意識をありありと感じます。
こちらは駅舎も小さいですし、あまりお金もかけてなさそうですが、この演出はかなり効果的なのではないかと思います。私はこちらの方が好み。
当時の一畑電鉄は、苦しい経営の中で昭和2年に電化、この大社線も当初から電化されていたそうです(JRの方は結局、電化されなかったのに)。
現在の一畑電鉄は、鉄道にとどまらず、バス、ホテルなどに事業を多角化し、今年オープンした島根県立古代出雲歴史博物館の運営まで担っています。地方の鉄道グループが気を吐いているのをみるとうれしくなります。
この駅をみるかぎり、その気概は創業当初からあったものではないでしょうか。
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コメント
すごい!この一畑電鉄の出雲大社前駅、現役とは!!
こんなすごい駅があったのか。
色ガラスが多用されていたり尖塔アーチ型のモチーフなど
教会みたいですよね。何か関連があるんかも知れませんね。
外観も変わっていますね。屋根材は瓦ですか?
JR大社駅とあわせて是非見に行きたいです。
投稿: ぷにょ | 2007年5月 1日 (火) 02:25
ぷにょさん、こんばんは。
出雲大社前駅は、瓦葺き、鉄筋コンクリート造で、床・壁がモルタル塗りとのことです。
かつては駅舎北側(外観写真でいうと左側)に塔部があったらしいので、ますます教会風です。
しかし、出雲大社の駅なのに教会とは。西洋建築で宗教的なものを表現するなら教会建築という発想なのでしょうか。
投稿: びんみん | 2007年5月 1日 (火) 23:51
このうさぎの絵はいいですね〜。
雪舟のようです(ちと大げさ)
投稿: Bassman | 2010年4月14日 (水) 09:52
Bassmanさん、こんばんは。
いいでしょう。
雪舟ですか。なんとなくニュアンスは分かります。絵心のある職人さんだったんでしょうね。
投稿: びんみん | 2010年4月15日 (木) 00:15