双葉温泉の柔と剛
よく晴れた土曜日、間もなく取り壊されるという旧双葉温泉の見学会に参加しました。
場所は駅でいうと阪急宝塚線の三国駅。淀川区西三国4−11というのは、神崎川の向こうなんですね。三国橋を渡ったところに「忘れてました」と言わんばかりに昭和初期の街が残っていました。新聞にも載ったとのことで、双葉温泉の前には既にカメラを構えた人が歩き回っています。
解説によると双葉温泉は昭和11年に開業し、2〜3年前に廃業されたそうです。
双葉温泉の名前は相撲取りの双葉山から。双葉山のタニマチだった関係で、双葉温泉なんだそうです。玄関上の屋根では双葉山の鬼瓦(?)が出迎えてくれます。吉祥の大黒さん、えべっさんも、双葉山の土俵入りに従えられているみたい。
玄関を入ると格天井の重厚な脱衣所。ステンドグラスがはまった衝立や天井扇は銀行からの転用だそうです。ちょっとぜいたくな気分になります。
脱衣所の天井は高く、衝立の上は大きく開いてますし、中庭まであって開放的です。男女それぞれに囲われた前庭まであります。
衝立のステンドグラスは、瀬戸内のような情景ですが、どこなんでしょう。
浴場に入るところにまたステンドグラスがあります。こちらは幾何学的なデザインに日の丸です。
浴槽も石なら、洗い場も石。洗い場の石も銀行のものらしく、重厚感が出ますね。
それを和らげる石の竹。ここから湯が注がれます。最初のステンドグラスが松でこれが竹。ロッカーの鍵はオシドリにツル、カランもツル。吉祥イメージがあふれています。
見上げると天井は高い位置に天窓があり、直線的でシンプルです。
内装はこのように手のかかったつくりで、こちらを柔とすれば、外観は剛。太いコンクリートの柱が力強く天井を支えています。
このような機会ですので、裏方部分も見せていただきました。目にすることのないろ過機。ツルカメ濾過機は、天王寺の浴用機械メーカー、鶴亀温水器工業(株)の製品のようです。それでツルのイメージが多かった?
濾過と洗浄を切り替えるハンドルが重々しいです。こちらも剛。
そして銭湯といえば煙突。でも真下から見上げるのはたぶん初めて。その肌はひび割れて、よく働く人の手のようです。長年ご苦労様でした。
このような機会を設定していただいた、大バンと所有者の皆さま、どうもありがとうございました。
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コメント
はじめまして。
ぷにょさんのところからたどってきました。
(コメントでお名前は拝見しておりましたが)
大黒さんとえべっさんには気付かずでした。その他、細かい部分での見落としがかなりあったことをこちらで知りました。無念です(笑)。
神崎川の向こうに淀川区が少しだけあることも初めて知ったくらいですけれど。
銀行の備品や素材が実にうまく使われて素晴らしい空間が形成されていたんですね。
このような素晴らしい場所が無くなるのは実に残念です。
投稿: ひろ009 | 2006年7月25日 (火) 21:18
ひろ009さん、ようこそ。
私もぷにょさんの所でお名前を拝見しております。
私も1時間以上はいましたので、何度もすれちがったはずですね。
銀行の備品の話は全て、当日もらった、「大阪人」の酒井さんの文章からです。素晴らしい再利用ですね。一部の備品は残ってもこの空間が失われるのは本当に残念なことです。
あれだけの人がほとんどカメラを持って撮ってましたので、今頃はあちこちで双葉温泉ブームかなと思います。
同じ場所でも見てるところが違うのがよく分かって面白いですね。私はタイルはあまりよく見てません。
投稿: びんみん | 2006年7月26日 (水) 01:44
こんばんは。
どうやら何度もすれ違ったみたいですね。
>同じ場所でも見てるところが違うのがよく分かって面白いですね。
まったく同感です。
視点が違うというのは面白いし、非常に参考にもなります。
”石の竹”、アップ写真は撮っていたのにそれが”竹”と気付いていませんでした(汗)。
ツルカメ濾過機や真下から見上げた煙突の写真は素晴らしい!
投稿: ひろ009 | 2006年7月26日 (水) 21:03
ひろさん、こんばんは。
こうして、たくさんの視点で双葉温泉の姿が残されたのは素晴らしいことですね。
諸事情で取り壊さざるをえない他の建物も、できれば、こういう形で最後に見送る機会を設けてほしいものだと思います。
投稿: びんみん | 2006年7月27日 (木) 00:31