みそごんぼと坂本さん
(日記といいながら、だんだん時系列が混乱しつつあります)
先日、出張ついでに津市の下之川という集落を訪ねました。
津市といっても、市町村合併で取り込まれたのはこの1月1日から。昨年末までは美杉村という村でした。合併によって今年でとうとう三重県から村が消えてしまったそうです。
旧美杉村は名張市の山向こうなんですけれど、電車で行こうとすると一度松阪まで行ってから、JR名松線というローカル線でゴトゴト折り返さなくてはなりません。下之川に行くには、さらに美杉コミュニティバスで25分ばかり。途中、おばあさんがひとり、よいしょと乗りこんで、小さな診療所で降りていきました。あとは私だけ。
今回の寄り道の目的は、この集落にしかない料理という味噌ごんぼ(ごぼう)の製造工程を見せていただくことでした。
400年の歴史があるというこの料理は、10月から3月まで作られるのですが、中でも2月11日の仲山神社のごんぼ祭りには各集落から作り手を出して、盛大に作ります。上の写真で中央の丘が仲山神社の鎮座する森。その手前にあるその名も「ごんぼ会館」に人が集まっています。意外かもしれませんが、味噌ごんぼを作るのは基本的に男の仕事です。子孫繁栄を願ったおおらかな時代の神事で、味噌ごんぼも子孫繁栄の意味があるといいます。
これが味噌ごんぼ。できたてでまだよく漬かってませんが。
唐辛子味と山椒味の2種類があります。
作り方は柔らかく蒸したごんぼに、唐辛子味噌や山椒味噌をまぶし、朴葉でくるみます。
昔は集落ごとに唐辛子の集落と山椒の集落があったそうです。
私は爽やかな山椒味噌の方が好みでした。唐辛子味噌もおいしいですけどね。2〜3日置くと香り高く、柔らかいごぼうに味噌がしみて、ごはんに合います。
そして下之川に行った目的はもう一つ。
坂本幸さんという方を訪ねることです。
坂本さんは、祭りとは別に、通年で味噌ごんぼを作られています。本業は農家・主婦だそうなんですが、山茶を摘んできたり、野草茶を作ったり、ゆべしを作ったり、餅を作ったり、いろんなものを考えては作っておられます。また18年間にもわたって村の古老らに話を聞いて『美杉村のはなし』『美杉村見てあるき』という2冊の本にまとめたり、紙芝居をつくって子供たちに読み聞かせたりされています。
そんな坂本さんは、鳥取県出身。高野山で精進料理を修行中、縁あって美杉村にこられたという異色の経歴です。そして、山奥ながら伊勢本街道が通り、伊勢国司・北畠氏が信長に滅ぼされるまで本拠地を置いていたという、物語の豊富なこの地に魅せられ、聞き書きを始めたそうです。のち、村を二分するゴルフ場建設問題から、環境に負荷をかけない暮らしを志向されます。
村外の仲間も多く、名張や大阪、名古屋などからもよく人が泊まりに来たりするそうです。
実際にお会いした坂本さんは優しい表情のおばさんでした。
どこにこんなバイタリティをお持ちなのだろうと思います。
そうそう。ごんぼ会館に手伝いに来ていた女性が2人おられたのですが、お一人は東京出身で、農村暮らしがしたくて全国を見て回り、ここ美杉村に決めたそうです。ほとんど自然にまかせる自然農法で野菜を作っておられるとおっしゃっていました。
私が「よそから来ている人は珍しいんでしょう」と聞くと、「いえ、大阪や名古屋から移り住んでいる人も結構いますよ」というお返事が返ってきました。
何がそこまで街の人を惹きつけるのか。ゆっくりとその理由を探してみたいなと思います。
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