芸術的な消耗品
以前、伊勢型紙について紹介したことがあります。
上の写真がその例で、京友禅や江戸小紋、浴衣、手ぬぐいなどに使われる型紙です。
(茶色い部分を残して、白い部分は切り抜かれています。これは突彫りという技法)
これだけ芸術的でありながら、あくまで製品は染められた布ですから、表に出ることなく消耗される運命にあります。華麗な色づかいの反物なら、50枚の型紙が費やされることもあるそうです。
仕事の取材の関係で(といいながら多分に個人的な興味で)このところ続けて伊勢型紙に触れる機会がありました。
まずは鈴鹿市白子の伊勢型紙資料館を訪ねました。
昔の伊勢型紙商人の筆頭だった寺尾家の住宅を資料館として公開しています。
ここでは、資料館の人が懇切丁寧に伊勢型紙について教えてくれます。「突彫」「錐(きり)彫」「道具彫」「縞(しま)彫」の4技法についてはここで教えていただきました。それぞれに違うノウハウがあります。
説明すると長いので詳しく知りたい方はこちらのページで。
資料館の一室では、若い人に技術講習も行われていました。
次に大阪歴史博物館で開催されていた「日本のわざと美」展へ。
工芸部門の重要無形文化財の作品展なんですが、その一企画として、伊勢型紙の実演がありました。4技法それぞれの名人が並んで実演するという贅沢な企画です。
それぞれじっくりお話を伺いました。「50枚の型紙」の話もこのとき。染色職人さんの技も超人的なもので、「ぱさっと型を置いたらもう位置が合ってる。歩幅で位置を測っているらしい」とか、「彫ったときのムラを染色の時に直してしまう」とか途方もない世界です。
最近は文化財行政も、道具や材料など周辺の産業にも目が届いているらしく、漆の刷毛、濾紙、織機などの仕事を紹介するパネル展示があって面白く見られました。
最後に京都のみやこめっせで開かれた「伊勢形紙展2006」。
こちらは伊勢型紙の明かりや額、屏風、しおり等々、伊勢型紙が主役になったアート主体の展示会でした。
表に出ていいじゃないかという考えもできますが、やはり本来、型紙は染めるためのもの。こういう展開には当事者にも複雑な思いがあるようです。
来場者に親しんでもらおうと、伊勢型紙のしおりを作る体験コーナーもありました。
古くなるほど深みを増すという柿渋の落ち着いた色合い、香りが広がっています。
と見てきたら、私もやってみたくなってつい、「伊勢型紙体験キット」なるものを買ってしまいました(笑)
(しおりはおまけにもらったものです)
染色は大層だけど、ステンシルに使ってみようかなと思っています。
(全然、「日記」じゃないですね)
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