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2013年1月14日 (月)

歴史的建造物を守るためのシンポジウムに行ってきました

130112sympo

1/12(土)に大阪弁護士会館で開催された「歴史的建造物を守るための専門家と市民とのシンポジウム」を聴きに行きました。

主な内容は次の通りです

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○基調講演
 1「保存問題の今と建築文化遺産の行方」
    京都工芸繊維大学 松隈洋教授
 2「歴史的建造物保護法制の現状と課題」
    上智大学 越智敏裕教授(弁護士)

○保存活動のご報告
 1「京都会館保存運動活動報告」
    岡崎公園と疎水を考える会 吉田和義代表
    京都弁護士会 飯田昭弁護士
 2「大阪中央郵便局庁舎保存活動報告」
 3「今後失われるかもしれない歴史的建造物の報告」
    大阪市立大学 高岡伸一特任講師(建築士)

○パネルディスカッション
 <テーマ>
  「保存すべき建物とは」
  「そもそも保存とは」
  「所有者の意向と市民・専門家の意見の調和」
  「現行文化財保護法制の問題点」など
 <パネリスト>
  ・京都工芸繊維大学 松隈洋教授
  ・上智大学 越智敏裕教授(弁護士)
  ・京都弁護士会 飯田昭弁護士
  ・大阪市立大学 倉方俊輔准教授
 <コーディネーター>
  ・公害対策・環境保全委員会委員 岡崎行師弁護士

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 会場には100人を越える方が全国から来られていました。
 
 内容が難しそうだったので、参加するかどうか迷ったのですが、参加してみてとても良かったと思います。
 一つには、歴史的建造物の保存について、どのような法制度になっているのか簡潔に解説していただけたこと。
 もう一つは、歴史的建造物の保存について考えるべき点についてたくさんヒントをもらえたことです。

 ここでは内容をなぞることはせず、私が印象深かったことだけ記しておきます。
 メモから拾っていますので、ちょっと違っていたらすみません。

○歴史的建造物を保存するための法律・運用を変える
 ・日本の現行の法律では歴史的建造物の保存は難しい
  (建て替えないと損で、保存は所有者の負担が大きい)
 ・民間所有と公有では分けて考えないといけない
 ・保有し続けることにメリットがあるような、
  また公有の場合は簡単に壊せないような、
  建造物保護の団体が不服の申し立てができるような、
  法律やその運用に変えないといけないということで、
  ここは専門家の皆さんに期待したいと思います。

○一般の人に分かりやすく伝える
 ・一般の人が建造物(町並み)に愛着をもつことの大切さ
 ・松隈先生が、市民が建造物をスケッチする姿の大切さ、
  アーキウォーク広島の事例(マップに可視化する・まちあ
  るきで語る→オーナーに伝えてほめる→建築を知れば風景
  が変わる)をあげておられたのは非常に腑に落ちました。

○何を保存すべきか
 (法的には国土の歴史的景観、造形の規範となるもの、
  再現困難のものを保存するとなっていますが)
 ・保存したいと感じるものを保存する。
  残すことで次世代の発見につながる(倉方先生)
 ・無名の建築でも素敵だと認めあう
  
○どう保存するか
 ・文化財指定抜きでも残るシステム(松隈先生)
 ・使いながら保存する
 ・安全性はソフトでクリアできる部分もある
 ・価値を市民が語る、日常的に関心をもつことで変なものが
  できたら叩かれる(松隈先生)
 ・所有権絶対視の緩和
 ・まず自分の地域を読み解くことから
  一番主要な物語・記憶を読み込む(倉方先生)
   =最も残すべきもの

○なぜ保存するのか? 経済・生活の質の面からも
 ・今の高層建築は50年後を考えても経済的?
 ・古い建築は懐かしい友(米)
 ・上手な利用で町の格が上がる(テートモダンの例)
 ・建築というのは「物体化されたみんな」、
  みんなの意識が物体化されたものであり、
  保存することでみんなが拡大することもある(倉方先生)
   →面白い考えだと思います

 全体を通して、
 これは歴史的建造物の歴史的価値の問題にとどまらず、自分たちがどう暮らしていくかの問題なんだなと確認できました。

 そして、残したいと思う環境が残るために、何よりふつうの人が「残した方がいい」「残すべき」と思うことが大事ですね。それは専門家でない自分たちでも取り組めることと思います。
 これまで自分たちがやってきた、街の素敵なものを掘り起こして魅力を伝えるということは方向性としては正しいと思いますが、もっと広く伝わる仕掛けがいるのかなとも感じました。

 こういうことを考えるといつも神戸の善九郎さんのことを思い出します。
 魅力を感じる風景を絵葉書にされているのですが、興味を持った人が訪ねられるよう、絵葉書に必ず地図を入れておられます。また、民家を描かれた場合は所有者にプレゼントされると聞きました。
 例えばそういうことなのでしょう。

 考える良い機会をいただいて、主催者の皆さま、ありがとうございました。

 なお、大阪弁護士会の公害対策・環境保全委員会・都市環境部会さんではこの問題に継続的に取り組んでいくとのことでしたので、保存運動をされる方は相談を持ちかけられると良いと思います。

 また、直近でいうと、精華小学校敷地のコンペが受付を閉め切って審査中ですので、ご注目をお願いします。

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コメント

ブリスベンでも10年ほど前から、歴史的建造物を残しておくよりもそれを壊してビルを建てたほうが儲かるという理由でどんどん建て替えが進んでいます。
まぁ、若い国ですので「歴史的建造物」と言ってもせいぜい100年くらいの建物なんですけど、その頃の建造物は仕事が丁寧で美しいものが多いらしいです。

・・・って、「らしい」だなんて伝聞系で申し訳ありません、古い建物を残しておくべきかどうかについてはあまり深く考えたこともなく…orz

「自分たちがどう暮らしていくかの問題」というお言葉にハッとしました。
今現在のブリスベンは経済優先になってしまって、それはそれでもちろんいいことでもあるんですが、あまりにもお金お金となっている感じがするのがかなり心配です。
お金では買えない価値みたいなものが、もっと尊重されるといいなぁと思います。

投稿: KYO | 2013年1月14日 (月) 07:55

KYOさん、コメントありがとうございます。
ブリスベンでも建て替えが進んでいるのですね。
私がアメリカに行った時、サンフランシスコだったので余計にかもしれませんが、古い建物を残していて、しかもウォーキングマップが配布されていたので驚きました。

もう少し多面的な価値が評価されてほしいですね。
経済最優先で街を作ってしまっていいのかという問題とともに、建て替えることが長期的に見て経済的なの?という疑問もあります。むしろ昔ぜいたくに手間暇かけて作った建物は長期的に収益を生む資産ではないのかと。

投稿: びんみん | 2013年1月14日 (月) 22:32

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