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2011年10月

2011年10月31日 (月)

「はならぁと」のならまちを歩く

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先日は奈良・町家の芸術祭「はならぁと」の五條と八木の会場を回りましたが、今度はならまち(奈良市)と大和郡山城下町の会場を回りました。

この「はならぁと」は、奈良県内の主に6エリアの町家を会場に、花にちなんだアート作品などを展示していたイベントです。この10/30をもって終了しました。

今回は、ならまちを展示以外のことも織り交ぜて紹介します。

最初に訪れたのは森家です。
明治20年代頃に建てられた町家だそうです。
今年改修が終わったばかりとのことで、きれいでした。

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各室に計4人の方の作品が展示されていて、屋根裏部屋までも展示スペースになっていました。
はしごに登ってのぞき込みます。
左側にある絵が展示作品。残りはたぶん元々あるもの。まるで、無造作に倉庫にしまわれているような展示です。

この作品を描いた岩名泰岳さんは、今回の作家さんの中でも最も印象に残った方です。
この絵と似たような色合いの絵が多いのですが、「こんな絵は見たことない」と思わされる存在感です。ちょっと説明しにくいのですが、埋もれていくような絵というのでしょうか。こちらに向かって来ないのです。
まだ24歳という若さにも驚きます。

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展示に使われている台などもどこかから引っ張り出してきたようでした。
年号が書いてあって、江戸時代のものみたいです。

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鏡台も年輪が美しく、良さそうなものです。

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ならまちは、近鉄奈良駅から南側のエリアで、昔はとても静かな町だった記憶があるのですが、ここ数年、カフェや雑貨屋などが増え、人通りも多く、京都っぽい雰囲気になっています。
それでも中心部を外れると静かな坂の街です。

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高低差があるので、小川が音を立てて流れていたのでしょう。
鳴川町という地名の仁丹看板が掛かっていました。

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古い玄関灯も残っています。

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「くるま座」は、江戸時代に砂糖蔵だった建物だそうです。
赤くて丸い模様が一面にあり、これは節を表しています。
普段見過ごしているものを意識させるアートです。

先日、神戸ビエンナーレの元町高架下会場で、戸井田雄さんの「時を紡ぐ」という、建物の傷を蓄光塗料でなぞった作品を見ていたので、それに通じるものを感じました。
それに比べるとちょっと強すぎるかなという気も。

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続いて、正木家。
明治中期の乾物屋の建物らしいです。
現在は奈良女子大学の奈良町セミナーハウスとなっています。

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ここで見た三瀬夏之介さんの作品が素晴らしいもの。
引き戸の向こうに立ちはだかるような水墨画の屏風です。
子どもの頃に見る夢で、戸を開けると異界が広がっている。
そんなイメージです。
戸をくぐってようやく全体が見渡せます。
古い町家の薄暗さがはまっていて、ずっとこのまま置いてほしいと願うような作品でした。

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この正木家、元々から繊細な造りが凝らされているようです。
例えばこの引き戸。とても繊細な桟が組まれています。

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作品とともに、家具も存在感があります。

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いつ頃描かれたのか分かりませんが、壁にエノコログサの絵。
繊細な筆で描かれた、このさりげない題材がいいです。

アート作品を見に行っているのか、町家を見に行っているのか分かりませんが。

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あとはおまけのようなものです。
うなぎの「江戸川」というお店、裏から見ると洋館と煉瓦塀が見えます。
後で調べると明治初期に絹布や麻布の卸商をしていた関家、のち宮島家の建物だったらしいです。
洋館は大正時代のもので、この部分も客室になっているらしいので、気になります。

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こちらはなぜか狛犬のいる家。

歴史があるだけに、周辺を歩いても面白いものが見つかります。

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2011年10月19日 (水)

五條の水のある風景

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五條は水にも恵まれたところです。
吉野川の側にある街であるだけでなく、金剛山地から流れ込む川もあります。五條新町だけでも3本の川が流れ込んでいて、街に変化を付けています。

この写真の川もその一つ。
川との関係も自在な所があって、川に向かって玄関があるのですが、大きく敷地が張り出し、見ていると冷や冷やします。

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この川を追って、渡り廊下のある小路を歩いて行くと・・・

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川に沿って並ぶ酒蔵を見ることができます。

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よく見ると石積は、流れが特徴的な紀州青石(緑泥片岩)です。
(忍者屋敷のような扉も気になりますが)

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蔵の階段に使われているのもそうではないかと。

中央構造線という断層があるために、五條は東西の便利な交通路の街となり、紀ノ川・吉野川が流れ、こういう岩が生まれるわけで、これらはつながっているのだなと思います。

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五條新町の通りのすぐ裏には堤防があり、向こうは吉野川です。
今回、川までは見に行きませんでした。

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もう一つ、気になる場所がありました。
櫻井寺から国道を越えた崖下のあたり。
崖に沿って細長い水場があり、建物がかかっています。

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湧き水があるのでしょうか。神様も祀られています。

この場所、特別な感じがして、五條にお出かけの際にはついでに立ち寄っていただきたいなあと思える場所でした。駅に急いでいるときだったので、ゆっくりできずに残念です。

五條の水のある風景はまだまだありそうです。

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2011年10月17日 (月)

五條で書体三昧

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今回の記事は、写真を見ていただいたら分かる内容です。
五條の街を歩いていると書体にとても懐かしさを感じました。
まず五條の住所表示板から。太いゴシックなのですが、手描きの味わいがある書体です。
となりの看板が気になる方が多いかもしれませんけど。

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駅前の案内図からして手描き。

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これも手描きの住所表示です。

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これがいくつも固まっている場所がありました。
さながら展覧会。

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旅館の看板も毛筆書体。

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「萬金物商」と書かれているようです。消えかけてますが。

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メガネの表示が出ていますが、この店は・・・

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時計店です。
どこかで見たことがある味のある書体。

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カタカナで「スグソコ」。既にどっちか分かりにくい。
右から書いてあるのは戦前からあるのでしょうか。

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きれいに修景されている五條新町の餅屋さん。
これは復刻版かも。

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ちょっと趣向を変えて薬局の壁。
荒谷薬局さんです。

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「薬」の字を拡大してみました。
赤かべに白字で名前を浮き上がらせています。
独特な書体です。

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角のたばこ屋さん。でもよく見ると、麻雀牌とか、GUNDAMとか、ディズニーキャラクターとか描かれているので、おもちゃ屋もされていたのかもしれません。

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こういうのは今風?

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明らかに昔風。

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現代風書体の醤油屋さん。

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看板オンパレードな薬局。
全然不自然さがなくて、昔からこうだったという感じ。

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最後に眼科を。
目の形を入れてます。

書体三昧は看板三昧でもあって、五條の街を歩いているとほんとに懐かしいものにたくさん出会えます。

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五條新町で近代のもの探し

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前回の記事でも、五條新町が旧街道の宿場町で、江戸時代の町並みが残っているとご紹介しましたが、そういう場合、えてして近代のものはあまり前面に出てきません。
そこを個人的趣味で、近代のものに注目してみました。

まず狭い通りに面して建つ近代建築。
旧五條市信用金庫です。大正時代の鉄筋コンクリート造の建物です。派手さはないですが、2階の半円のバルコニーが目立っています。
現在は桜井写真店の看板がかかっていますが、営業されているんでしょうか。

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続いて沢井眼科。同じく大正時代の建物ですが、こちらは木造です。
町家を外観だけ洋風にしてあるそうです。
軒の蛇腹とか、2階のひさしなどが、なんとなく似てます。

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産業近代化の象徴ともいえる、赤煉瓦の煙突。
六角形の断面でしょうか。

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こちらは赤煉瓦の四角の煙突。
いずれも蔵元の山本本家さんの煙突です。



地図で確認するとこの山本本家さんの敷地というのが川をまたいで北側にまで続いていて、その敷地の取り方にちょっとびっくりします。

ちなみに五條駅の近くでも赤煉瓦の煙突を見ました。

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五條新町を西に歩いて行くと3つの小さな川を越えます。
3つ目の橋が、寿命川にかかる神田橋です。
いつのものかは分かりませんが、尖頭アーチの窓、ずんぐりと丸みのあるデザインなど見ると、昭和初期かと思えます。

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なお、向こう側に見えるアーチは、幻の鉄道と言われる五新鉄道の新町高架橋(昭和17年)です。
五新鉄道は、五條と新宮を結ぶ鉄道として昭和12年に着工されましたが、戦争による物資不足などで工事が中断、戦後に工事が再開されますが、採算性の問題で、ついに鉄道が走ることがないまま終わりました。

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さて五條新町の通りには変わったものが置いてあります。
「書状集箱」と書いてあって、明治4年に郵便制度が始まった頃に使われていたものの復刻版だそうです。ほんとにポストとして使っているそうですよ。

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五條新町から道を渡ったところにあった民家の玄関灯です。
つるがくるくると巻いていて、葉まで表現されているアールヌーヴォー風の優美なデザインです。

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こちらは新しいかもしれませんが、また変わった玄関灯です。

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これはまちや館に置いてあった金庫。
中にはさらに鍵付きの引き出しが入っています。
M&ADRONIBSHと書かれていて、輸入品だろうと思いますが、検索しても引っかかりませんでした。
ちなみに中には砂しか入ってなかったそうです。

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今回見て回った町家の中で面白かったのが、お医者さんをされていた前防邸の離れの装飾です。
大正時代の建物とおっしゃっていたように思うのですが。
まず鶴の釘隠(くぎかくし)。
とても細かい細工がされています。

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床下の換気口がまた面白くて、まずうさぎ。

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うま。

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つばめ。

この3種の動物に、各3パターンの動きがあって、計9パターンのデザインになっています。
全て写真に撮っておかなかったのが悔やまれます。

前坊邸の離れと蔵は、この秋に宿泊施設として生まれ変わるそうなので、機会あれば訪ねてみて下さい。

やはり豊かだった街には、装飾にも面白いものがあるようです。

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2011年10月13日 (木)

奈良の町家で「はならぁと」開催中

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私もつい最近知ったのですが、
奈良・町家の芸術祭「はならぁと」というイベントが開催されています。この頃増えている、町家で現代アートを展示するイベントです。
奈良県内の7つの街で、10/8(土)〜10/30(日)まで開催という大がかりなもの。
「はな」+「なら」+「アート」で「はならぁと」
花がテーマになっています。

ふだん非公開の町家なども公開されるということで、初日に出かけてきました。

まずは五條です。
五條は江戸時代の宿場町の町並みが残る(さらに修景されている)重要伝統的建造物群保存地区の、新町通が舞台です。吉野川のすぐそば。
→新町通の解説は五條市のHP

まずは栗山本家を見学しました。

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軒先に板が下げられていますが、吉野川の川霧を防ぐ霧除けの板で、ここの町家の特徴だそうです。

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ここでは地元の作家さんの作品が展示されています。
その作家さんというのが、なんとここの奥様で、ご本人が案内もしてくださいました。
関東から嫁いでこられた方で、東京でも個展を開かれたりしているそうです。
本当は人物画を好んで描かれるそうですが、はならぁとなので、花の絵を出しておられます。

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ご商売を伺うと材木を商っておられたそうで、そう思ってみると建具などとてもきれいな木が使われています。てかてかしているのは、塗りの職人が入っていたそうです。

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続いて山本本家。創業280年の酒屋さんです。


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ここは花谷久味子さんの屏風に生花の作品が展示されていました。
が、それ以上に頭上の杉玉群がインパクトがあります。
これは作品ではなくて、いつもこうしてあるそうです。


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続いてまちや館。普段から公開されている建物ですが、特別に奥や2階が公開されているそうです。

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ひとつ展示をご紹介すると藤田りよさんのアート。
球根に目鼻とぼんぼんが付いてユーモラスです。
ここどこだと思いますか?


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トイレです。

2階では、部屋に舞う紅葉の扇が見事でしたが、それは現地でどうぞ。

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こちらは前防邸。
お医者さんのお宅で、右が本宅、正面が離れ、左が蔵です。
離れと蔵が展示会場になっていました。
離れの細工が見事だったので、別の記事で紹介します。
離れはこの後、宿泊施設にされるそうです。楽しみですね。

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リリアン編みで包んでいくという山本麻世さんのアート。
この日も制作中で、会期中にも増殖していくそうです。

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その近くにはまちなみ伝承館
まちなみ伝承館とまちや館の2つが普段からの観光施設です。
ここではChumpol Taksapornchaiさんというタイの作家さんが展示されていました。

このほか、時間がなくて訪問できませんでしたが、西尾邸や中家住宅なども公開されています。

五條は久しぶりの訪問(20年ぶりぐらい?)でした。
いろいろ面白いものがあったので、別に記事にします。

続いて、電車で畝傍駅まで移動。
八木の会場を見に行きました。(今井の会場もすぐ近くです)

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(北)河合家の会場です。

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面白いのがかまどの蓋。蓋に凝るのは珍しいですね。
菊水の紋は楠木正成に縁かと思うのですが、分かりません。

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(東)河合家ではいしかわかずはるさんの、ひもの作品。
格子に合って面白い作品です。時間が遅くて中は見られませんでした。

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再びJRの畝傍駅。
ここの面白いのは、皇族のご利用のために右端に貴賓室があることです。

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貴賓室と駅のホーム。専用の階段があります。

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この日の夜は、貴賓室で映画『ハーブ&ドロシー』のチャリティー上映会がありました。
昨年話題になった、NYの美術コレクター夫妻のドキュメンタリー映画です。
ぜいたくな会場ですね。いい映画でした。


この日は、見たところ地元の人とアート好きの学生さんが歩いているという感じで、そんなに混んではいませんでした。

はならぁとは、今井・八木・五條新町 → 三輪・宇陀松山 → 郡山城下町・ならまち の順にリレー式に開催されます。
またもう一度ぐらい行けたらな、などと考えています。

<関連HP>
 公式HP「奈良・町家の芸術祭 HANARART(はならぁと)」

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2011年10月 3日 (月)

増田清建築ツアー(2)精華小学校と新世界国際劇場

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精華小校舎愛好会による増田清建築ツアーの続きです。
三木楽器本店から難波に移動して、ツアーとしては外せない旧精華小学校を見学しました。ただし、今回は外部見学のみです。

 →内部については以前の記事
  「大阪の誇り・旧精華小学校」をご覧下さい。

精華小学校は、増田清の設計で昭和4年に建てられた非常に上質な建物です。(受け売りですが)

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この季節の精華小学校はツタに覆われていました。

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今の入口は戎橋筋側にありますが、もともとの正門は反対側にあって、こちらの入口から入り、地下で靴を履き替えて各教室に移動していたそうです。

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「精華小学校児童通用口」のプレート。
玄関の枠には深いジグザグ模様が刻まれています。
黄色の石材は日華石かという解説でした。日華石は石川県の小松市産の凝灰岩で、旧甲子園ホテルなどに使われています。
黄色は高級な石材だそうです。

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さらに新世界に移動しました。
これはツアーに関係ないのですが、通天閣下警ら連絡所。ついでに写真を撮っておきました。

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これも増田清には関係ないですが、ギャラリー再会(旧喫茶再会)を少し外から見学しました。昭和28年に建てられた純喫茶の建物で、戦後建築ながら登録文化財です。
今は毎月最終土曜の2時からジャズライブを開催しているそうです。

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ギャラリー再会の玄関部分。

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さて、本題の増田清作品。
新世界国際劇場(旧南陽演舞場)です。
こちらも外部見学のみ。
この建物は近代建築と知っていましたし、映画を観たこともあるのですが、増田清設計とは知りませんでした(それ以前に増田清を知りませんでしたが)。

昭和5年にできた芝居小屋で、昭和25年に映画館に改修されました。大阪では唯一と言ってもいいかもしれない、レトロな映画館です。見た目にもデザインが面白いので、近代建築と分かります。
(以前は近くに新世界公楽劇場というのがあったのですが)

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背面側から。こちらにも丸窓があります。

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南側の通路から。同じく丸窓があります。
あまり見たことのない側。

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扉も古びていい感じの色合いです。

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ところで、新世界国際劇場といえば、この面格子が面白くて、どういう意味なんだろうと話していたのですが、今回、参加者のお一人が謎解きをしてくださいました。

「南陽演舞場」の「南陽」です。
文字の並びは「陽南」ですが、言われてみればなるほど、でしょう?
もう一つぐらいプラスアルファの意味が含まれているかもしれません。面白いデザインです。

今回のツアー、最後は新世界のお寿司屋さんで会食でした。
精華小校舎愛好会さんには、このようなツアーを企画していただき、ありがとうございました。

<関連記事>
 「大阪の誇り・旧精華小学校」 ぜひ読んでください!

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