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2008年9月23日 (火)

池田室町住宅地

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池田に用事があり、少し早く出かけて、日本初の郊外分譲住宅地として知られる池田室町住宅地を歩いてきました。箕面有馬電気軌道(のちの阪急)の小林一三氏が、明治43年(1910年)、大阪梅田と宝塚・箕面を結ぶ鉄道開通に合わせて開発した住宅地で、鉄道会社による住宅開発、住宅の月賦販売の先駆けでもあります。(この記事は吉田高子さんの「池田室町/池田 小林一三の住宅地経営と模範的郊外生活」(『近代日本の郊外住宅地』所収)に依っています)

住宅地の場所は阪急宝塚線・池田駅のすぐ西側で、線路沿いに歩くルートもありますが、私はこの池田中央市場の左を抜けて中央大通りにつながる道を入りました。

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この道が中央大通りです。右手にさっそく洋館付き住宅があって、期待が高まります。

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住宅地の中心には室町会館があります。住宅地開発の翌年、明治44年(1911年)に建てられた和風の室町倶楽部が前身で、昭和11年(1936年)に外観を洋風に大改造し、現在に至っています。ぴょこんと飛び出た屋根や焼き板張りの壁は和風の名残でしょうし、直線的なモダンデザインに玄関脇のアールが昭和10年代らしく、一風変わった建築になっています。

室町倶楽部の建物には、購買組合も入り、米穀・薪炭・酒・醤油・味噌などを販売していました。倶楽部・購買組合ともうまくいかなかったようですが、住民組織の室町委員会(のち室町会)は機能しています。

なお、玉子を縦割りにしたような石碑は池田室町住民憲章の碑(平成17年)です。

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室町会館には社団法人室町会が入っていて、池田室町住民憲章の碑の説明板が掲げられています。そのまま紹介します。

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私たちの町池田室町は 明治43年阪急電鉄(株)創設者小林一三氏の発想により わが国最初の郊外住宅地として「建売分譲」「長期割賦」方式により販売せられ 開発以来90有余年の歴史を持っています

 そして私たちの先輩は このまちづくりの精神と理想に則り「自分たちのまちは自分たちの手で」をモットーに社団法人「室町会」を設立し 自主的に平和で安全なまちづくりに取り組んできました

 整然とした町並みと 五月山の緑 猪名川の清流に囲まれ 呉服神社の森 家々の樹木や生垣は 四季を通じて私たちの目を楽しませ 温かく迎えてくれるまちでもあります

 今後も常に 緑化と美化に心がけ住宅環境の保全に努めると共に隣人や町の人々との交わりを大切にして 明るく仲むつまじい豊かなまちづくりに努めます

 この度 住民の合意による住民憲章の制定を記念して「池田室町住民憲章」の碑を建立します

 平成17年5月吉日

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 住民意識の高さが窺えます。

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床下換気口のグリルもチェック。シンプルですが、若干のデザイン心が入っています。

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室町会館周辺はこんな感じです。離れてみると呉服(くれは)神社の森を背負って会館が建ち、和風住宅が並ぶ当時の雰囲気が少し感じられます。

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この呉服神社は機織・裁縫・染色の技術を伝えた渡来人・呉服媛にちなむ神社で、仁徳天皇の時代に創建されたとされる由緒ある神社です。住宅地開発前、神社の森は田園に浮かぶ島のようでしたが、池田室町住宅地に取り込まれて、公園の役目も担っています。

右手にある室町幼稚園は大正11年にできた「家なき幼稚園」をルーツとするもので、昭和25年から室町会の事業となりました。


大きな地図で見る
住宅地の環境はこのようになっています。
呉服神社を中心に北東を阪急の線路、北西を猪名川に囲まれています。線路の北側には池田の旧市街が広がっています。
住宅はみな北東から南西に向かう道に沿って建っています。

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初期の開発は全て和風2階建ての住宅地でした。
207区画のうち83区画がまず分譲され、うち77区画は基本4タイプの住宅だったそうです。1区画は約100坪の正方形、建坪は約20坪です。

焼き板塀の町並みが初期の風景ではないでしょうか。
池田室町住宅地は100年近くたっているので建て替えも進んでいますが、「焼き板塀」、「杉皮張りの和風2階建て住宅」、「2階建ての蔵」、「洋館付き住宅」が印象的です。順に紹介します。

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この建物の門塀はモダンなので、時代は少し下りそう。
杉皮張りの壁は明治の住宅地の雰囲気です。

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蔵をもつ家がたくさんあるのも古い住宅地ならではでしょう。

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そのなかに煉瓦の蔵もありました。
(逆光で見にくいですが)

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例によって床下換気口を覗き込みます。
これはどこかで見覚えが・・・と思ったら新潟の鍋茶屋の蔵で見たものと同じデザインでした!ちょっと感激。

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また足下に煉瓦を敷いていたので刻印煉瓦もチェック。日本煉瓦株式会社(堺)と推定される四弁花の刻印がいくつかと十字(?)の刻印が1つありました。

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続いて洋館付き住宅です。当初の和風住宅に増設したんでしょうね。

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小屋裏換気口が尖頭アーチを組み合わせたような変わった形です。ハート型の植物模様の鬼瓦はよく見かけます。

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これも洋館付き住宅。白い洋館はハーフティンバーで、黒い和館はどっしりと、かなりギャップがありながら美しく建っています。

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こちらの洋館部分はかなり傾斜の緩い屋根です。屋根の持ち送りがS字カーブで変わっています。

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2階建ての洋館いくつかに改造が加わって独特な姿に。
なお、この通りは中央の大通りで、左に街路樹が1本立っています。アオギリかな? 昔は街路樹があったそうですが、今はこれだけです。大通りといっても広くはないので、車の通行の邪魔になったのかもしれません。

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これも洋館付き住宅で、セセッション風の(?)門柱がありました。
地区の南西の端あたりです。

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この一角はコンクリート塀で、また違った雰囲気。
左が先ほどの洋館付き住宅、右が次に紹介する洋風住宅です。

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和風的要素があるとはいえ、丸々の洋風住宅は、住宅地内ではこれだけではないでしょうか。窓枠など木製建具が残っています。

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小屋裏に2つ開いた換気口にデザイン化された格子がはめられています。

建て替えが進んでいるとはいえ、池田室町住宅地は当初の純和風住宅・蔵付き住宅から増築された洋館付き住宅、洋風住宅まで見ることができます。規格化が持ち込まれていても単調ではなく、見どころの多い住宅地でした。

<関連記事> 他の郊外住宅地のインデックスはこちらです。

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コメント

旅のーとI友のOです。
池田室町住宅地、全然知りませんでした。
なんと、建売分譲や長期ローン返済のさきがけであり、明治43年大阪府下で全国初であったとは!
住宅も魅力的なのが数多く残ってますね〜。
これは私も呉服神社とセットで散策必須です。

床下換気口の足下煉瓦ですが、+の刻印は魔除けとしての呪符、十字紋ではないでしょうか?
十字紋は洋の東西を問わず、お城の石垣等によく刻印されていますし。
換気口の星形・五芒星も、ここから魔が侵入しないように…との意図でしょうね。

投稿: O | 2008年9月24日 (水) 20:36

Oさん、コメントありがとうございます。
ぜひ散策してください。
そんなに広くありませんし、駅近で平坦です。
写真が多くなりすぎるので省略しましたが、呉服神社は大きくステンドグラスを使った華やかな社殿です。

駅北の池田旧町もいい雰囲気ですので、ぜひ合わせてどうぞ。

煉瓦刻印は製造所を示すために古い煉瓦にはよく入ってますので、そういうことかなと思ってます。

換気口の五芒星、なるほどそういう見方がありましたか。魔除けが似合う場所ですね。
床下換気口はいいデザインが多くて(とくに明治のもの)、気をつけてみています。魔除けっぽいものが他にないか見ておきますね。

投稿: びんみん | 2008年9月25日 (木) 00:26

前略

東京に住んでいるものです
池田室町の紀行記大変興味深く拝読
田園都市について興味を持っており
この池田室町は日本で初めて
田園調布よりも早く開発された田園都市だと
伺っています
特に神社の配置には感激しました

現在の住宅地の現況がこのサイトでわかるで
大変興味深かったわけです
この内容を自分で書く文章で
一部引用したいと思いますが
お許しいただけますでしょうか

投稿: OR | 2009年10月 6日 (火) 20:46

OR様

 はじめまして。
 この記事及び池田室町住宅地に関心を持っていただきましてありがとうございます。
 神社を囲むように計画されているのは興味深く思います。

 引用していただくのは全く構いません。
 できましたら後でどこに使われたかお教え下さい。
 今後ともよろしくお願いいたします。
 

投稿: びんみん | 2009年10月 7日 (水) 00:42

はじめまして、アド・グローバルの片岡と申します。室町で宅地分譲を予定しており、広告チラシにこちらのサイトを、ご紹介させていただければ、と考えております。できましたらチラシデータをご覧いただければと存じます。お手数ですが、ご連絡いただけませんでしょうか。宜しくお願いします。
(有)アド・グローバル  片岡
携帯電話 090-3969-4688

投稿: アド・グローバル 片岡 | 2010年10月18日 (月) 15:05

アド・グローバル 片岡さま

はじめまして。
当ブログの記事に関心を持っていただきましてありがとうございます。
ただ、気まぐれに書いているブログですので、商用にはちょっと・・・と思います。
wikipediaの「室町(池田市)」の項へのリンクでしたら間接的につながるのですが、いかがでしょうか。
よろしくお願いします。

投稿: びんみん | 2010年10月19日 (火) 01:46

びんみんさん、こんばんは。
びんみんさんのブログを参考に
池田の室町周辺に行ってきました。
見つけれなかった建物もありますが
凄いところでした。
ありがとうございました。

記事にはまだしてませんが
石橋の元衛生研究所のカフェも訪ねました。
ありがとうございました。

投稿: MANAZOU | 2015年5月 2日 (土) 22:15

MANAZOUさま、こんばんは。
いつもご紹介ありがとうございます。
最初期の郊外住宅地があれだけ残っているのは凄いですよね。周辺も含めて。
石橋衛生研究所のカフェにもいらっしゃいましたか。
私はしばらく訪問できてなくて、ちゃんと営業されているようでなによりです。

投稿: びんみん | 2015年5月 4日 (月) 23:09

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